2017 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン共役電子移動反応における理論的解析手法の開発
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17H06928
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀 優太 九州大学, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (40806915)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | プロトン共役電子移動 / 透熱ポテンシャル / 量子ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
プロトンと電子がカップリングして起こるプロトン共役電子移動(PCET)反応は酵素反応の活性中心など様々な反応過程で起こる反応であり、その反応機構の解明は、タンパク質の機能発現機構の解明だけでなく、PCETが起こる一般的な化学反応機構の理解につながる。その解析は、実験的には困難であることから、理論計算による解析が必須となる。今年度は二核銅オキソ錯体によるメタンの水酸化反応、二核コバルトオキソ錯体の酸素発生反応やプロトン伝導物質中の伝導プロセスの反応機構の解明を行い、多方面からのプロトンや電子移動反応の理解を試みた。量子化学計算による銅錯体のメタン水酸化反応機構の解析から、活性種の生成過程およびメタンのC-H活性化におけるプロトン移動と酸化過程による電子移動の観測を行うことができた。特にメタン水酸化酵素中の酸素活性種生成過程で、電子密度解析による電荷変化を探索することにより、プロトン移動と電子移動が多段階で進行する複雑な反応過程で進行することを明らかにした。さらに、触媒設計に対する理論的提案に踏み込んだ。金属オキソ錯体を用いた種々の反応では、金属および酸素上のスピン状態が反応のコントロールしており、電子状態の制御がPCET反応を解析する上で重要であることが明らかとなった。一方、プロトン伝導物質中の伝導機構の解析から、伝導中のプロトン移動と分子運動の関係性を明らかにした。これらの理論結果はPCET反応の詳細な理解のための足掛かりとなるものとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属錯体を用いたメタン活性反応過程でのプロトン共役電子移動反応の役割について理解することができた。また実験研究との共同研究を通じて、より深い解析を行うことができた。その研究成果は国内外の学会での発表や専門誌での掲載などにより公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトン共役電子移動(PCET)に対する速度論による解析を行う。電子移動(ET)反応に対して、制限付き密度汎関数理論を用いることにより、Marcus理論に基づいた速度定数の算出を行う。さらにこれまでに開発したプロトン移動(PT)に対する透熱ポテンシャルを用いた速度定数算出法を適用することにより、ETとPT反応の速度定数の算出を行い比較する。PTの速度定数の算出には透熱ポテンシャル上での時間相関関数を調べることによって計算する。速度定数算出法の定式化を行うとともに、量子ダイナミクスシミュレーションへのプログラムの実装を行う。
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Research Products
(10 results)