2017 Fiscal Year Annual Research Report
Activin Aの選択的分化誘導能を応用した新規歯周組織再生療法の開発
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17H06945
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉井 英樹 九州大学, 大学病院, 助教 (80802280)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | Activin A / 歯根膜細胞 / 前骨芽細胞 / 骨芽細胞様分化 / 線維芽細胞様分化 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、Activin Aによるヒト歯根膜細胞の線維芽細胞様分化誘導機序およびヒト前骨芽細胞の骨芽細胞分化誘導機序を明らかにするため、ActivinⅠ型受容体であるactivin like kinase-4 (Alk4)に着目し、Alk4をノックダウンしたヒト歯根膜細胞およびヒト前骨芽細胞を用いて、その1)線維芽細胞様分化および2)骨芽細胞分化に及ぼす影響について解析を行った。 1)siRNAを導入したAlk4ノックダウンヒト歯根膜細胞を作製し、Activin A存在下で1週間培養を行った。その結果、Activin A添加により、コラーゲン形成能および線維芽細胞様分化関連因子発現の亢進を認めたが、Alk4ノックダウンヒト歯根膜細胞においてはActivin Aによるコラーゲン形成および線維芽細胞様分化関連因子発現の亢進を認めなかった。これらの結果より、当初の計画通り、Activin Aによる線維芽細胞様分化が、Alk4を介したシグナル伝達経路により誘導されることが明らかとなった。 2)Alk4ノックダウンヒト前骨芽細胞を作製し、Activin A存在下で骨芽細胞分化誘導培地にて3週間培養を行った。その結果、Activin A添加により、石灰化物形成能および骨芽細胞分化関連マーカー因子の発現の亢進を認めたが、Alk4ノックダウンヒト前骨芽細胞細胞においてもその効果に差異は認められなかった。これらの結果より、Activin Aによる骨芽細胞分化は、Alk4を介しておらず、その他の受容体を介して誘導されることが推察された。 以上より、Activin Aはヒト歯根膜細胞とヒト前骨芽細胞に対して異なった受容体を介してその分化誘導を行っていることが示唆され、Activin Aという1種のサイトカインのみで細胞により異なる分化誘導を行うことで、歯周組織再生に寄与していることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、Activin Aによるヒト歯根膜細胞の線維芽細胞様分化誘導機序およびヒト前骨芽細胞の骨芽細胞分化誘導機序を明らかにするため、ActivinⅠ型受容体であるactivin like kinase-4 (Alk4)に着目し、Alk4をノックダウンしたヒト歯根膜細胞およびヒト前骨芽細胞を用いて、その1)線維芽細胞様分化および2)骨芽細胞様分化に及ぼす影響について解析を行った。 1)siRNAを導入したAlk4ノックダウンヒト歯根膜細胞を作製し、Activin A存在下で1週間培養を行った。その結果、Activin A添加により、コラーゲン形成能および線維芽細胞様分化関連因子の発現の亢進を認めたが、Alk4をノックダウンしたヒト歯根膜細胞においてはActivin Aのコラーゲン形成および線維芽細胞様分化関連因子の発現亢進を認めなかった。これらの結果より、当初の計画通り、Activin Aによる線維芽細胞様分化が、Alk4を介したシグナル伝達経路により誘導されることが明らかとなった。 2)siRNAを導入したAlk4ノックダウンヒト前骨芽細胞を作製し、Activin Aの存在下で骨芽細胞分化誘導培地にて3週間培養を行った。その結果、Activin A添加により、石灰化物形成能および骨芽細胞分化関連マーカー因子の発現の亢進を認めたが、Alk4をノックダウンしたヒト前骨芽細胞細胞においてもその効果に差異は認められなかった。これらの結果より、Activin Aによる骨芽細胞分化は、Alk4を介しておらず、その他の受容体を介して誘導されることが推察された。 以上より、Activin Aはヒト歯根膜細胞とヒト前骨芽細胞に対して異なった受容体を介してその分化誘導を行っていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
Activin Aのヒト前骨芽細胞の骨芽細胞分化誘導にはAlk4は関与していないことが示唆されたので、Activinのシグナル活性の調節に関与することが報告されているAlk2に着目し (Renlund et al., J Endocrinol, 2007)、siRNAを導入した、Alk2ノックダウンヒト前骨芽細胞を作製し、Activin AのAlk2を介したシグナル経路が、ヒト前骨芽細胞の骨芽細胞分化に及ぼす影響を検討する。 ヒト歯根膜細胞におけるAlk4およびヒト前骨芽細胞におけるAlk2を介する細胞内シグナルについて検討を進めるため、Alk4をノックダウンしたヒト歯根膜細胞およびAlk2をノックダウンしたヒト前骨芽細胞を用いて、ウエスタンブロット法にてp-Smad2/3およびp-Smad1/5/8の活性を検討し、Activin Aの細胞内シグナルにおいて、どちらのSmadを介したシグナル経路がヒト歯根膜細胞の線維芽細胞様分化およびヒト前骨芽細胞の骨芽細胞分化に関与しているのかについて検討する。これにより、Activin A-Alk-Smadを介するシグナル経路に関する更なる解析を行う。 さらに、in vivoにおけるActivin Aの効果を解析するため、過去の報告に基づいて(King et al., J Dent Res., 1997)、ラット歯周組織傷害モデルを作製し、これを用いてその傷害部位にActivin Aを応用して、Activin Aの歯周組織再生能を検証する。また、歯周組織再生誘導能について比較するため、EMD (Emdogain®:ビオラ社)およびFGF2 (リグロス®:科研製薬株式会社)を比較対照とする。 以上によって、骨欠損を含む歯周組織に対するActivin Aによる組織再生能を明らかにする。
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