2017 Fiscal Year Annual Research Report
Keratin17による抗アポトーシス機構を介した口腔癌新規治療薬開発を目指して
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17H06947
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三上 友理恵 九州大学, 大学病院, 医員 (70801661)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | Keratin17 / 口腔扁平上皮癌 / GLI / 抗アポトーシス / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
Keratin17 は口腔扁平上皮癌において腫瘍部に特異的に発現するマーカーとして着目されている。Keratin17 が口腔癌標本において腫瘍部に特異的に発現し、抗アポトーシス作用を介して腫瘍増殖を促進すること、およびKeratin17 がGLI シグナルによって発現制御されていることを平成28年度(公表:平成29年度)に報告した。本研究においてはKeratin17 が果たす口腔扁平上皮癌における抗アポトーシス機構の分子基盤の解明およびKeratin17 を標的とした新たな核酸医薬による口腔扁平上皮癌の新規分子標的薬の開発を目的としている。平成29年度は以下の研究結果を得た。 Keratin17 の腫瘍細胞増殖の促進について効果の確認のため、Keratin17 に対して複数のUTR(Untranslated Region)領域において追加で作製したsiRNA を用いて口腔扁平上皮癌細胞株のKeratin17 をノックダウンし、その結果十分ではなかったが癌細胞の数の減少を認めた。一方、Keratin17 過剰発現株を用いて細胞数の減少の回復を図ったが、結果が顕著に現れなかった。そのため、siRNA の配列の検討を行い、Open Reading flame(ORF)領域にて口腔扁平上皮癌細胞株での腫瘍細胞増殖を抑制するsiRNA を設計した。このsiRNA でのノックダウン効率および細胞数の減少については良好な結果を得ている。さらにそのsiRNA 相当部に変異を加えたKerartin17 過剰発現安定株の作製を行った。現在、作製した株を用いて、腫瘍細胞増殖についてのレスキュー実験を行い、Keratin17 の腫瘍増殖促進の機能について検討を行っている。今後、Keratin17 の抗アポトーシス作用についても作製したKerartin17 過剰発現安定株を用いて行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Keratin17 の配列は、UTR の部分が短くUTR 領域で設計できるsiRNA が限られている。UTR 領域にて追加作製したsiRNAでは、レスキュー実験の結果が顕著に現れず、現在ORF 領域でsiRNA を設計している。すでにORF 領域において設計しているsiRNA のKeratin17 のノックダウン効率および細胞数の減少は確認できており、そのsiRNA 相当部に変異を加えたKeratin17 を過剰発現させ、細胞数の減少の回復を図るレスキュー実験を行う予定である。平成29年度の計画において、siRNA の作製および変異体の作製に時間を要したため、抗アポトーシス作用に重要な領域を決定できていない。このことから考慮し、やや当初の計画より遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
①Keratin17 の抗アポトーシス作用に重要な領域の同定:過去の報告を参考にKeratin17 の重要とされている領域をそれぞれ欠損する変異体のKeratin17 発現ベクターを作製する。Keratin17 siRNA を用いてアポトーシスを誘導した口腔扁平上皮癌細胞株にそれぞれのベクターを導入する。結果として、アポトーシス誘導が解消されない変異体の領域がKeratin17 の抗アポトーシス作用に重要な領域であることが同定できる。変異体作製については手法が確立している。 ②アポトーシスに重要な領域に結合するタンパク質の同定:①で同定した領域と、その領域を欠損する変異体を293T 細胞に過剰発現させ、細胞溶解物を電気泳動後銀染色する。その結果、①で同定した領域由来の細胞溶解物にのみ検出されるバンドを単離し、質量分析する。この結果、同定された抗アポトーシス関連因子とKeratin17 との相互作用について免疫沈降またはプルダウンアッセイにて直接結合するか検討する。 ③ゼノグラフトモデルマウスを用いた抗腫瘍効果の検討:ヌードマウスの背中の皮下にKeratin17 を高発現している癌細胞を移植するゼノグラフトモデルを用いてhuman Keratin17 siRNA を投与し、Keratin17 がノックダウンできていることを確認し、抗腫瘍効果(腫瘍の体積および重量)について検討する。 ④舌発癌モデルマウスを用いた抗腫瘍効果の検討:化学発癌物質である4-nitroquinoline 1-oxide をヌードマウスに10 週間経口摂取させることで舌発癌モデルマウスを作製する。Keratin17 の発現の高い時期を免疫組織化学染色にて確認し、その時期にKeratin17 siRNA を投与し、腫瘍の体積および重量から、抗腫瘍効果について検討する。
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