2017 Fiscal Year Annual Research Report
ATLにおけるDNA脱メチル化剤を用いた新規治療法開発の基盤研究
Project/Area Number |
17H06956
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
渡邉 達郎 佐賀大学, 医学部, 寄付講座准教授 (20595714)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | ATL / DNA / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)で認められるDNAメチル化状態の異常に注目し、DNA脱メチル化剤を用いた新規治療法の開発を目指し、その基礎的データの蓄積を行う。 はじめに、ATLに対するDNA脱メチル化剤の抗腫瘍効果をin vitroで検討した。ATLの原因ウイルスであるHTLV-1感染細胞株及び、ATL細胞株にデシタビンを処理したところ、細胞株毎に異なる感受性を示し、アポトーシスの誘導とともに細胞増殖を抑制した。アザシチジンは細胞毎で比較的均一な増殖抑制効果を示す一方、その作用はデシタビンに比べて弱い傾向を示した。また、DNAのメチル化状態の指標としてLINE-1領域のメチル化をバイサルファイト処理-パイロシークエンス法で調べたところ、デシタビンはアザシチジンに比べて強くLINE1のメチル化を減少させた。 遺伝子発現データベース解析から、ATL細胞においてDNAメチル化亢進により遺伝子発現が抑制されていると予想される遺伝子をいくつか選び出し、発現量をreal-time PCRで測定したところ、予想通りデシタビンで強く発現量が回復した。また、高度免疫不全マウスへのHTLV-1感染細胞株の皮下移植モデルにおいて、デシタビンは皮下移植腫瘍の増殖を抑制した。 アザシチジンとデシタビンはどちらもDNA脱メチル化剤として知られているが、ATL細胞(HTLV-1感染細胞)に対するDNA脱メチル化を介した細胞増殖抑制作用についてはデシタビンがより強いことが明らかとなった。現在、我が国ではアザシチジンのみが承認薬として使用されている。昨年度の結果は、DNAの脱メチル化を介した抗腫瘍効果を期待する場合、デシタビンがより適していることを示唆するものであり、今後の研究方針にも大きな意義を持つと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度では培養細胞株と臨床検体を用いて、DNA脱メチル化剤の抗腫瘍効果を検討する予定であったが、臨床検体を用いた解析については、研究に掛かる書類申請・採択に時間を要し、昨年度中には実施できなかった。培養細胞株を用いた解析から、実験系は確立されているため、実験が開始できれば、計画の遅れは取り戻せると考える。 一方、平成30年度に予定していた、抗腫瘍効果と相関するDNAメチル化領域の探索については遺伝子発現データベースを利用し、いくつかの候補遺伝子を抽出できた。初年度中に、脱メチル化剤処理により遺伝子発現が回復することが確認でき、当初の計画より進んでいる。 第二世代DNA脱メチル化剤であるグアデシタビンについても検討する予定であったが、購入を予定したメーカーが取り扱いを停止しており、代替メーカーも見当たらず、検討できていない。グアデシタビンはデシタビンのプロドラッグであり、薬理作用はデシタビンと同様であると考えられるが、化合物が入手でき次第解析を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
HTLV-1キャリアやATL患者さんのPBMCに対するデシタビン、アザシチジンの抗腫瘍効果について、in vitro, あるいはPDXマウスモデルを樹立してin vivoで検討する。どちらの実験においても昨年度中に培養細胞株を用いた解析で抗腫瘍効果を認めており、同様の実験系を用いる予定である。この時、PBMC中のATL細胞(HTLV-1感染細胞)に対する抗腫瘍効果の解析については、脱メチル化剤処理により細胞表面タンパク質の発現も変化し得ることが明らかになったため、細胞表面タンパク質を指標にした解析に加え、pro-viral loadをreal-time PCRで解析する方法も取り入れる。 ATL細胞において脱メチル化剤により遺伝子発現が回復する遺伝子について、昨年度中に候補遺伝子群がいくつか見出されたため、本年度はその機能解析等を行い、実際にATL細胞の増殖・生存に寄与し、ATLの病態の進行に関与しているか検討する。
|
-
-
-
-
-
[Journal Article] Deep sequencing of the T cell receptor visualizes reconstitution of T cell immunity in mogamulizumab-treated adult T cell leukemia.2017
Author(s)
Shindo Takero, Kitamura Kazutaka, Ureshino Hiroshi, Kamachi Kazuharu, Miyahara Masaharu, Doi Kazuko, Watanabe Tatsuro, Sueoka Eisaburo, Shin-I Tadasu, Suzuki Ryuji, Kimura Shinya
-
Journal Title
Oncoimmunology
Volume: 7
Pages: e1405204
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
[Presentation] TCR Repertoire, Effector Regulatory T-cells and KIR Genotyping Uncover Immunological Dynamics in Mogamulizumab-treated ATL2017
Author(s)
Shindo T, Kusunoki Y, Kitamura K, Nishikawa H, Watanabe N, Ureshino H, Miyahara M, Watanabe T, Sueoka E, Espinoza L, Takami A, Ichinohe T Suzuki R, Tanaka H, Saji H, Kimura S
Organizer
The 18th International Conference on Human Retrovirology: HTLV and Related Viruses
Int'l Joint Research
-