2017 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における「国民感情」形成過程に関する基礎的研究―新聞『日本』を素材に―
Project/Area Number |
17H06964
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鈴木 啓孝 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (20803711)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | 思想史 / 日本史 / 文化史 / ナショナリズム / マスメディア / ルポルタージュ / 貧困問題 / 国民感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、明治20年代に「国民主義」を主唱したことで知られる新聞『日本』の紙面にしばしば登場する「国民感情(国民精神・愛国心)」ということばが意味する内容を当時の歴史的文脈に照らして正確に捉え返すことである。そのために、『日本』主筆・陸羯南(1857-1907)の手に成る社説記事のみならず、論説や雑報など主筆以外の記者によって書かれた記事や、新聞紙面の視覚性を調査し、当時の新聞『日本』紙上で「国民感情」ということばがどういった文脈で用いられていたのかについて網羅的な分析を行う。研究開始初年度にあたる本年度の研究実績は、概ね以下の通りである。 (1)福岡大学図書館での資料収集:研究の対象となる新聞『日本』の複写と取りまとめを行った。当初の研究計画にあった明治24年発行分と合わせ、その前年にあたる明治23年後期発行分についても、適宜複写と取りまとめを行った。 (2)データベースの作成:アルバイト学生1名の助力を得つつ、明治24年前期発行分の新聞紙面に載った記事を、①掲載年月日、②掲載号-面-段、③掲載欄、④タイトル、⑤著者、⑥内容別に分類し、データベースを作成した。 (3)資料読解:取りまとめた資料の読解を進めた。当初の研究計画である明治24年前期発行分を読み進める内に、そこで展開された議論の前提について詳しく知る必要が生じ、結果として、明治23年後期発行分の読解と分析に集中することになった。具体的には、明治23年11月から24年3月にかけて開催された第1回帝国議会に関する報道の前後で、新聞『日本』の編集及び宣伝の戦略に変化があることを確認することができた。現在、明治23年の8月から12月にかけて新聞『日本』が展開した貧民問題キャンペーンと第1回帝国議会に政府が提出した窮民救助法案との関連性について精査中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始初年度にあたる本年度は、資料収集と分析に終始しており、研究成果を提出するには至っていない。ただし、これは採択後半年間しか経ていないためであり、当初の研究計画通りである。資料収集と分析については、当初計画の明治24・25年発行分の内では明治24年前期発行分について着手したのみであるが、反面、明治23年後期発行分に取りかかっている。その結果、当初計画では予想していなかった新しい研究展望を開くことができた。現在、その展望に沿って進めた研究の成果公表に向けた準備を鋭意進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、本年度も福岡大学図書館での資料収集とその整理と分析を行う。具体的には、明治24年後期発行分と明治25年発行分の新聞『日本』を収集し、紙面から視覚を通じて得られる情報についての多角的な分析を加えつつ、そこでいわれた「国民感情(国民精神・愛国心)」の内実の把握に努める。研究最終年度につき、すでに公表されることが内定している分もあわせ、学会発表や学術論文などの研究成果をなるべく多く出せるようにしたい。
|