2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a methodology to estimate potential for seismic activity caused by fluid injection into a geothermal reservoir or an aquifer
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17H06967
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
才ノ木 敦士 熊本大学, 国際先端科学技術研究機構, IROAST准教授 (70802049)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 誘発地震 / 拡張有限要素法 / 地熱開発 / 連成解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
大深度地下岩盤内で発生する誘発地震をシミュレーションするために近年提唱された拡張有限要素法の理論を基にして新たな二次元連成解析プログラムを構築した。開発したプログラムは、岩盤内部での流体流れとそれによって引き起こされる岩盤不連続面の力学的挙動(誘発地震)を連成解析によってシミュレーションすることができる。既存の数値解析プログラムと違う点は、岩盤き裂内部の水の流れだけでなく、き裂から周囲岩盤への流体の流出も考慮することができ、大深度地下岩盤に流体を注入した場合の間隙水圧の変化をより正確に再現することができる。また、動的摩擦則と呼ばれる断層が動的に挙動した場合の断層表面のせん断応力変化を記述することができる構成則を導入し、微小地震発生時の断層のせん断応力変化をより正確にシミュレーションできるようにした。この開発したプログラムを用いて、過去に行われた断層への流体注入による誘発地震発生実験をシミュレーションし、その妥当性を検証した。その結果、断層への流体注入量を実験値と合わせることによって、解析から得られた周囲岩盤の間隙水圧上昇値が現場での測定結果と完全に一致することが確認でき、開発したプログラムの妥当性を検証することができた。この成果を2018年10月に北京で開催される国際学会で発表する予定である。 上記の数値解析プログラムの開発に加えて、熊本県阿蘇地域において地震計を用いた微小振動計測をスタートさせた。当初予定していた地熱発電所での誘発地震計測ができなくなり新たな候補地の選定に時間を要したが、地熱発電開発予定地において測定を開始することができた。流体注入によって発生する誘発地震ではないが、大深度地下に存在する地熱貯留層内部の流体の動きによって発生する微小振動を測定するため、発生原理的には同じである。現在も計測を続けており、得られたデータの分析を逐次行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
誘発地震の原位置計測に関して遅れが生じている。当初誘発地震計測を行うことを予定していた地熱発電所があったが、周辺住民に不安が生じる可能性があるということから地震計測を断られた。その後、別の地熱発電所に地震計測の打診を行ったが、同様の理由で地震計測を断られ、誘発地震計測地の選定に時間を要した。最終的に熊本県阿蘇地域の地熱発電開発予定地において微小振動計測をスタートすることができたが、当初の予定よりも六か月ほど遅れている。
数値解析プログラムの作成に関しては概ね順調に進んでいる。Khoei(2005)が提唱した拡張有限要素法の浸透流と力学変形を考慮した連成解析の支配方程式に、誘発地震をシミュレーションするために必要な項を新たに加えて定式化を行い、地熱貯留層への流体注入によって引き起こされる誘発地震をシミュレーションするための二次元数値解析プログラムを独自に構築した。まだ改善すべき点はいくつか残っているが、開発したプログラムを用いて過去にヨーロッパで行われた断層への流体注入による誘発地震発生実験の再現解析を行ったところ、現場で計測された値と数値解析から得られた値が良い一致を示した。したがって、開発した誘発地震シミュレーションプログラムの妥当性を検証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、過去に行われた断層への流体注入による誘発地震発生実験の再現解析から、注入された流体のき裂内部と周辺岩盤内での振舞いに関して妥当な結果を得ることができた。次の段階として、断層自体の力学的挙動に関しても過去の実験と比較し、解析に適用された断層の動的摩擦則の妥当性検証や入力パラメーターの逆解析など行う。その後に、数値解析結果から得られる断層のすべり速度や地震エネルギーといった様々な地震パラメーターを検証し、数値解析結果から非地震性すべりと地震性すべりを判別する手法の開発を行う。そして、現在は単一のき裂(断層)しかモデリングできないが、複数のき裂や、き裂の分岐をモデリングできるようにプログラムの改良を行い、断層が屈曲する場合や、複雑なき裂ネットワークが存在する岩盤内への流体注入をシミュレーションできるようにプログラムの拡張を行う。
地熱開発予定地域での微小地震の原位置計測に関しては、データの蓄積と分析を続ける。そして得られた微小地震の波形からサイズミックモーメント、地震エネルギー、seismic efficiencyなどの地震パラメーターを推定し、計測地での微小地震データベースを構築する。
最後に、本研究で開発した誘発地震シミュレーションプログラムと微小地震計測から得られたデータベースを用いて、地下岩盤内での流体の圧力変化と微小地震の関係性を明らかにする。そのために、計測を行っている地域の断層と地熱貯留層内の流体流れを、開発した拡張有限要素法プログラムでモデリングを行う。そして、地熱流体の流量・圧力変化と微小振動発生がどのように関係しているのかを定量的に評価し、地下への流体注入や地熱流体の生産によって引き起こされる誘発地震をシミュレーションするための数値解析手法確立を目指す。
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Research Products
(2 results)