2017 Fiscal Year Annual Research Report
幼少期ストレス誘発性筋異常疼痛の治療に対する薬理遺伝学を用いた検討
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17H06978
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
古川 みなみ 鹿児島大学, 附属病院, 助教 (00806474)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 幼少期ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、幼少期ストレスは精神疾患や発達性障害、筋異常疼痛などの発症に関与することが報告されているが、その原因は不明である。また、中枢神経の主要な抑制物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)は生後1、2週間で興奮性から抑制性へ機能変化することが知られている。これをGABAスイッチといい、正常な神経回路の構築に必須である。我々は幼少期ストレスが抑制系のGABA機能の成熟に影響を与え、正常な神経回路の構築が出来ず、発達性障害などにつながると考え、育児放棄モデルとして母子分離ストレスを用い、このストレスが抑制系のGABA機能の成熟に与える影響を各種イメージング法にて解析した。その結果、GABAの成熟に関与するK+-Cl-cotransportor(KCC2)の細胞体周囲の発現が母子分離により減少していた。一方、KCC2とは反対の働きをし、GABAの興奮性に関与するNa+,K+-2Cl-cotransportor(NKCC1)の発現は母子分離により影響を受けなかった。また、母子分離によりGABAスイッチが遅れており、抑制系の成熟が遅れていることがわかった。さらに、抑制系の成熟が正常に行われないことで、シナプスの刈り込みが正常に行われないこともわかっている。そして、思春期相当の時期に行動解析をおこなったが、母子分離により多動性の増加、認知能力の低下、注意力の低下、攻撃性の増加といった行動異常が認められた。これらの結果から、精神疾患や発達性障害、筋異常疼痛などの発症の予防、改善に抑制系の成熟を標的とした新たな治療法の確立が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼少期ストレスとして母子分離を用い、活動ニューロンマーカーであるc-fos染色を行い、全脳の網羅的解析を行い、研究領域の探索後、関心領域での抑制系成熟時期の調査を行い、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
抑制系の不活性化、活性化を行い、抑制系の成熟とシナプスの刈り込みの関係をさらに調査する。また、刈り込みの誘導と観察を行う。さらに、筋異常疼痛の関与領域での独立性、階層性、相関性の解明を行い、治療対象領域を限定し、抑制系を特異的に活性化し、筋異常疼痛の消失を確認する。
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