2017 Fiscal Year Annual Research Report
A study on motivation and method of use of Dependent contractor for construction jobs by employment type
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17H06982
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
柴田 徹平 岩手県立大学, 社会福祉学部, 講師 (10806061)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 個人請負就労者 / 労務管理 / 建設産業 / 労働者保護 / 建設職人 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、インタビュー調査の実施と平成30年度に実施する企業調査に関する理論仮説を得ることを目的に研究を進めた。調査協力者は9~12名程度を予定していたが、最終的には15名になった。調査協力者は、神奈川および東京において建設職人を組織する労働団体からの紹介を通じて募集した。25名からの応募があったが、調査参加者の条件(①総務省『国勢調査』による建設個人請負就労者の職種構成をもとに職種に偏りがないようにすること、②一人親方労災に加入していること、つまり建設産業では個人請負就労者と本人が考えていても実際は労働者であるケースがあるため、この労災に加入していることを個人請負就労者の条件とした)にあてはまる15名の建設個人請負就労者から協力を得た。調査実施時期は、平成29年8月から平成29年10月にかけて行った。 調査方法は、上記で触れたとおり、インタビュー調査(半構造化インタビュー)を用いた。柴田がインタビュー対象者の希望場所に伺いインタビュー調査を行うことにしていたのであるが、結果として対象者を紹介いただいた労働団体の事務所で行うこと多く、事務所が13人、対象者の自宅が2人であった。また以上の調査実施に当たっては、岩手県立大学研究倫理審査会に申請し、調査の許可を得ている。 インタビュー調査の結果を踏まえて、平成30年度に実施する企業調査の理論仮説である「活用する企業が重視する要素」(柴田2017)の妥当性を検討した。その結果、「活用する企業が重視する要素」である①技能水準(代替変数として経験年数を用いる)、②活用期間(恒常的か一時的か)、③活用する理由(コストカット、専門性、繁忙期への対応)、④報酬の支払い方と水準(労働者階層のどの部分に相当するか)、⑤労働時間の拘束(拘束的な働き方か自由度の高い働き方か)の5指標が妥当であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近年、個人請負就労者の活用が世界的に拡大しており、また先行研究により不安定就業的特徴や労働者保護・社会保障からの排除が指摘されてきた。さらに2006年に採択されたILOの雇用関係勧告は個人請負就労者の法的保護に関する方向性を示しており、個人請負就労者の活用実態の解明は世界的な課題である。一方、これまでの研究は個人請負就労者に着目した視点であり、先行研究では活用する企業に着目した研究の重要性が指摘されてきた。そうした状況を踏まえ、本研究では個人請負就労者を使う企業の活用動機とその方法を就業形態別に明らかにすることを目的にした。平成29年度はこうした問題意識に立ち、企業調査を進めていく上での理論仮説を得るために個人請負就労者へのインタビュー調査を行った。調査協力者の職種は大工4名、電工、内装、設備、塗装が各2名、とび、土木、型枠大工が各1名であった。 なおインタビュー調査を進める過程で、当初想定していた理論仮説が職種によって現れ方が異なっていることが判明した。こうした結果の真意を確かめるために追加的なインタビュー調査を実施した。この調査により進捗状況に3か月の遅れが出た。 インタビュー調査より以下の点が個人請負就労者を活用する上で重視されていることが明らかになった。つまり、①経験年数が報酬や採用に影響を与えていること、②常時使う場合の方が臨時的に使う場合よりも報酬が上がること、③活用する理由には個人請負就労者の専門性や繁忙期対応などがあげられること、④報酬の支払い方と水準が労働者の労務管理と比較するうえでも有用な指標であること、⑤労働時間を自立的に決定できることが個人請負就労者が個人請負として働くか否かを決める一つの基準となっていること、が明らかになった。また職種によって5つの点の現れ方が若干異なるが、柴田が設定した理論仮説そのものは妥当であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度のインタビュー調査の分析結果を踏まえて、社会政策学会等で発表し、論文の投稿を実施する。またインタビュー調査によって妥当性が明らかになった、「活用する企業が重視する要素」(柴田2017)の理論仮説をもとに、企業調査の調査項目を検討する。その上で調査票案を用いた企業へのプレ調査を行い、その結果を踏まえて、設問や質問方法等を部分的に修正する。調査票は郵送法等による調査を行い、有効サンプルを概ね100程度確保するよう努める。得られたデータを分析し、就業形態別の個人請負就労者の活用動機と方法とその目的を報告書にまとめる。報告書は調査協力者、団体、企業に配布し、成果を社会的に還元していく。なお調査分析のポイントは以下のとおりである。 個人請負就労者を活用する企業の労務管理の特徴として、個人請負就労者の①経験年数、②活用期間(恒常的か一時的か)、③活用する理由(コストカット、専門性、繁忙期への対応)、④報酬の支払い方と水準(労働者階層のどの部分に相当するか)、⑤労働時間の拘束(拘束的な働き方か自由度の高い働き方か)が労務管理にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とする。 また個人請負就労者の活用に関する国際的動向についても同時に調べ、整理した上で、企業調査の分析に用いる予定である。またその成果は、社会政策学会の国際交流セッションで発表予定である。平成29年度は、理論仮説を得るためのインタビュー調査で予期していない結果が出たため、追加的な調査をする必要が生じ、研究の進捗に3か月ほどの遅れが出た。平成30年度はこうした遅れを取り戻すように研究計画を立てる必要がある。具体的にはアンケート調査の分析期間の短縮と報告書執筆時期の前倒しを行うことによって遅れを取り戻す計画である。
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Research Products
(3 results)