2017 Fiscal Year Annual Research Report
マルチラジカル分光計測による大気圧プラズマ相界面反応-体積反応の相互作用解明
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17H06987
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中川 雄介 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (80805391)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / ラジカル反応 / レーザー分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大気圧プラズマの相界面反応がプラズマ中の気相化学反応に及ぼす影響の解明を目的とし、電極表面近傍におけるラジカルの挙動をレーザー分光法により測定するものである。特に、純酸素中の放電においてオゾン発生効率が漸減する「オゾンゼロ現象」に関し、電極表面反応が現象発現に大きな影響を及ぼすことを鑑み、酸素プラズマにおける酸化系ラジカルの挙動解析を主たる対象とする。 平成29年度は、当初の予定に基づき高精度レーザー分光システムを構築し、プラズマで生成された酸素原子の挙動を二光子励起レーザー誘起蛍光法によって計測した。本研究独自の球対棒電極配置のプラズマリアクタを作製することで、電極間隔0.5 mmの極短ギャップ放電において電極近傍でレーザーを集光することが可能となり、約10μmの空間分解能を実現した。 パルス高電圧印加によるプラズマ生成と、レーザー照射による酸素原子密度測定との間の時間間隔を制御することで、プラズマ生成後の酸素原子密度の時間変化を測定した。その結果、プラズマ生成後およそ50 μsで酸素原子はほぼ消滅することが分かった。 また、酸素原子の減衰過程から、プラズマ中の温度を推定した。酸素原子の減衰に関する反応速度は温度依存性が大きいため、減衰速度から温度を推定することができる。計測で得られた酸素原子密度の減衰曲線と、温度をパラメータとした化学反応シミュレーションとを比較した結果、プラズマ中の温度は約400 Kと推定された。極短ギャップ酸素放電におけるプラズマ中の温度を直接推定した先行例はほとんどなく、本計測結果はオゾンゼロ現象の解明に寄与するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、プラズマリアクタの作製、レーザー分光システムの構築、及び酸素原子の挙動計測を実施した。また、電極構造を工夫することで、極短ギャップ放電において高い空間分解能でラジカル挙動計測を実現した。 平成29年度に予定していた振動励起酸素分子O2(v)の密度測定は、同年度中には実施できなかった。これは酸素原子計測に注力した結果、当初予定していたO2(v)の計測に着手できなかったためである。 一方で、酸素原子計測に注力したことで、平成30年度に予定していた極短ギャップ放電におけるプラズマ中の温度推定を平成29年度に実現した。 以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、予定通りOHラジカルの密度測定を行い、電極近傍における酸素原子の挙動と合わせてラジカル反応を解析する。振動励起酸素O2(v)のオゾン生成に対する影響は酸素原子及びOHに比べて低いため、OH計測を優先して実施する。また、OH回転温度測定からプラズマ中の温度を見積もり、平成29年度に実施した温度推定結果と比較して妥当性を検証する。 さらに、プラズマで生成されるオゾンの密度を計測し、オゾンゼロ現象の有無と、電極近傍におけるラジカル密度及び温度の挙動との関係性を定量的に解析する。
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Remarks |
平成29年度の結果を、平成30年度6月の国内学会、7月の国際学会にて発表予定(査読通過済)。
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