2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel therapeutic method for heart failure targeted on PRMT5/MEP50 complex
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17H07003
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
宮崎 雄輔 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (40803466)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 循環器・高血圧 / メチル化 / 機能解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全は日本人の死因第二位を占めており克服すべき重要な疾患である。これまでに申請者らは心肥大及び心不全発症に関与するp300/GATA4経路の関連因子としてタンパク質アルギニンメチル化酵素 (PRMT5) を見出した。また心臓特異的PRMT5-TGマウスの心臓に圧負荷をかけると野生型のマウスに比べ心肥大がより強く誘導されることを明らかにしている。このことからPRMT5は心肥大及び心不全を誘導する因子と考え検討を行ってきた。 平成29年度は大動脈縮窄術 (TAC術) を行ったC57BL/6JマウスにPRMT5特異的阻害剤であるEPZ015666を経口投与し、圧負荷による心肥大誘導改善効果の検討を行った。その結果、PRMT5特異的阻害剤の投与により心肥大の抑制及び心機能の改善がみられた。現在心不全の治療法は降圧剤や利尿剤などの薬物を用いた対症療法が主軸であり、心不全発症に関与するシグナル経路を標的とした治療薬はない。この結果より、PRMT5特異的阻害剤が新規心不全治療薬になる可能性が示唆された。 また心臓特異的PRMT5-TGまたはKOマウスのマイクロアレイ解析も実施しており、PRMT5がどのようなシグナル経路を介して心肥大及び心不全発症に関与するのかを明らかにすることでPRMT5特異的阻害剤の治療薬としての新規性及び意義も明らかにできると考えている。 さらに申請者らはin vitroにおいてPRMT5がp300をメチル化することをおいて明らかにしており、PRMT5がp300のメチル化を介して心肥大及び心不全発症に関与する可能性が示唆されている。PRMT5によるp300メチル化の心肥大及び心不全における意義は未だ不明であり、今後心臓特異的PRMT5-TGマウスを用いて検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の実施状況は以下の1、~3、の通りである。1、については当初の予定では平成30年度の予定だったが、動物モデルを用いた検討で効果が得られることが本研究の目的である「治療効果の検討」を達成する上で重要と考え前倒しして実施した。2、及び3、についてはおおむね予定通りの進捗である。 1、平成29年度は大動脈縮窄術 (TAC術) を行ったC57BL/6JマウスにPRMT5特異的阻害剤であるEPZ015666を経口投与し、圧負荷による心肥大誘導改善効果の検討を行った。その結果、PRMT5特異的阻害剤を投与したマウスでは手術のみの対照群に対し、心肥大の抑制、心機能の指標である心短縮率の改善、心室壁肥厚の抑制がみられ、PRMT5特異的阻害剤が新規心不全治療薬になる可能性が示唆された。 2、心臓特異的PRMT-TGマウス及びKOマウスの心臓における遺伝子発現制御機構をより詳細に解析するために、マイクロアレイ解析を実施した。これらは現在解析中であり、解析候補遺伝子を絞り込んだ後、培養細胞や初代培養心筋細胞及び動物モデルを用いて、PRMT5との関連性についてより詳細に解析を進めていく。候補遺伝子については複数の候補を挙げ、心筋細胞肥大や細胞毒性を指標としてスクリーニングし検討を進める。 3、申請者らはこれまでに、心臓特異的PRMT5-KOマウスが出生後、成体になる過程で死亡することを見出している。成体においてPRMT5をノックアウトしても同様の変化がみられるのか、検討を行うため平成29年度には心臓特異的エストロゲン受容体融合型Creリコンビナーゼ発現マウスを用意し、心臓特異的タモキシフェン誘導型PRMT5ノックアウトマウスを作成した。現在これらのマウスにタモキシフェンを投与し心臓超音波エコー検査による心機能および心室壁、内腔径の評価と生存期間解析を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 申請者はこれまでにPRMT5がp300のR200をメチル化することを見出している。そのため本年度はp300メチル化の生理的機能を明らかにするために、心不全マウスの心臓におけるp300のメチル化レベルの検討とp300のアセチル基転移酵素活性変化について検討を行う。さらに質量分析法でp300のメチル化部位を探索し、メチル化部位を欠損させたp300変異体を作成することで、PRMT5によるp300メチル化の効果を評価する。 2. 申請者はこれまでに心臓特異的PRMT5-KOマウスのホモ接合体が若齢期に心不全を呈することを明らかにしている。平成29年度に心臓特異的PRMT5-KOマウスの心臓マイクロアレイ解析を実施しており、現在はより詳細な解析を行う遺伝子の探索を行っている。本年度はPRMT5-KOマウスで特徴的な発現変化の見られた遺伝子について、培養細胞、初代培養心筋細胞、マウスモデルを使用した解析を予定している。 また昨年度はタモキシフェン誘導型の心臓特異的PRMT5-KOマウスを作出した。現在タモキシフェン投与により遺伝子ノックアウトを誘導し、これまでのKOマウスと同様の症状を呈するのか、心機能評価、生存期間分析を実施している。今後、組織学的解析、遺伝子発現解析などを組み合わせてより詳細な検討を行う。 3. 現在、PRMT5によってメチル化されるタンパク質は多数報告されているものの、心筋細胞における特徴的・機能的なPRMT5の標的タンパク質は知られていない。そこで心臓のメチル化アルギニンタンパク質を網羅的に解析し、PRMT5標的タンパク質の探索を行う。現在、メチル化タンパク質の網羅的探索とマイクロアレイ解析を実施し、PRMT5の心臓における機能を解析している。 【連携研究者】 国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 展開医療研究部 長谷川浩二 遺伝子改変マウスの飼育・管理
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