2017 Fiscal Year Annual Research Report
自傷行為を行った中高生への養護教諭の対応に対する支援体制構築に関する研究
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17H07010
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Research Institution | Mie Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
前川 早苗 三重県立看護大学, 看護学部, 講師 (30805982)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 自傷行為 / 学校 / 自殺予防 / メンタルヘルス / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、テーマとする若者の自殺予防、メンタルヘルス支援に関する研究を開始するにあたって学校のニーズを把握するために教員や保護者を対象とする研修を3回行った。そこから、学校現場としては、自殺に関する話題を聴く機会が少ないこと、その背景となっているメンタルヘルスの問題の理解と対応については具体的な方法を知ることが役立つ、実際にリストカットをした生徒への対応、自己肯定感を上げる声かけ、生徒の声をうまく引き出せる方法といったことにニーズがあった。更に、大切であったのは中高生を支える保護者や教諭のメンタルヘルスを支えることであり、支援する大人の側がどのように自分たちのストレスコーピングを行うかということについて不安があることが分かった。 研修を通して、更に研修受講者の中からインタビュー協力者を募って、中高生の自傷行為に対する教諭や養護教諭の対応、体制に関して具体的な工夫や困りごと、今後への希望などに関するインタビューを行っており、今後質的記述的に研究の分析を進めていく。 インタビュー結果から現在言えることは、「学校における支援の体制」「具体的な生徒への支援方法」」「地域資源の連携と互助」の三つが大切であるということである。「学校における支援の体制」としては、教職員の疲弊へのサポート、生徒をチームでサポートする、教員の中の調整役の存在、課題のある生徒の情報共有方法の工夫といった内容があった。「具体的な生徒への支援方法の獲得」としては、研修への参加、対応方法の知識を得る、複数体制での対応、周囲からの客観的な助言といった内容であった。「地域資源の連携と互助」としては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど外部支援の活用、学校と言う決まった期間における支援であるからこそ児童相談所や地域の子育て支援部門と卒業後を見据えた関係作りといった取り組みがなされていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究のインタビュー協力者を募集するため教員向け研修の実施計画を立てたが、学校の年度計画と研修時期の調整が難航し遅れたため、研究協力者の募集時期が遅れることになった。教職員向け研修では、学校での大きな課題として生徒の自傷行為への対応があり研修会の参加希望者は管理者である、校長や教頭はじめ、教諭、養護教諭と幅広かった。研修参加者の中から協力者を募り、インタビューを開始することができるようになったところである。 現在は研究協力者も確保できたため、学校行事との調整をしながらインタビューを開始している。学校側のニーズもあり、協力体制はあるため継続して進めていけることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度養護教諭への相談体制を構築として、三重県内の中学校高校に勤務する養護教諭や教諭に対して、生徒が自傷行為を行った際の対応の相談を受け、①自傷行為を行う生徒や生徒を取り巻く環境を理解するための知識や情報提供、②生徒や環境についてのアセスメント方法、③養護教諭や教諭が支援を行うための希望や不安の軽減と具体的なプランニングを行う。 相談体制を受けた教諭や養護教諭の中で協力希望者には書面にてインタビュー調査の内容について説明し同意を得る。同意を得られた方を対象として、勤務する学校の校種、年代、経験年数、学校での役割を尋ねる。インタビュー内容は、自傷行為を行う生徒への対応の経験、今回の相談内容と生徒支援の影響として、初期対応と継続支援や他職種への調整に関して、①どのような対応の工夫を行い、実際に役立ったことは何か、②生徒への支援の中で役立った体制はどのようなもの、③養護教諭や教諭が目指したい支援と、それに関してどのような課題や改善点があるかについてインタビューガイドを用いて半構造化面接を行い質的な分析を行う。得られたデータから自傷行為を行った生徒に対して養護教諭や教諭が行う効果的な支援方法とそのために必要な支援体制について三重県立こころの医療センターのユースメンタルサポートセンターのスタッフとともに検討する。以上より分析した結果をもとに養護教諭や教諭といった学校関係者向けの生徒の自傷行為に関する理解を深め、支援方法と体制についてのパンフレットの作成を行う。パンフレットには、インタビュー内容をもとに自傷行為を行った生徒に関する効果的な養護教諭の初期対応、継続支援方法、他職種への調整方法と必要な支援体制についてパンフレットを記載し教育委員会や養護教諭に配布する。また、得られた研究成果について社会精神医学学会で公表するとともに論文執筆および投稿を行う
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