2017 Fiscal Year Annual Research Report
The development of targeted therapy to ion transporters of esophageal cancer stem cells
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17H07014
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
工藤 道弘 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (20804264)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 食道癌 / 癌幹細胞 / 分子標的療法 / イオン輸送体 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト食道癌細胞株TE4、TE8を用いて、まず食道癌幹細胞株の樹立を試みた。食道癌幹細胞マーカーであるALDH1によって分解され蛍光を発する試薬Aldefluorを用いて、各々の細胞株を蛍光標識し、ALDH1活性の高い細胞をcell sorter(SONY SH800)を用いて分離した。これらを非接着性プレート、特殊無血清培地(b-FGF、b-FGF、B27 supplement)を用いて培養し、spheroidが形成されることを確認した。これら形成されたspheroidにおけるALDH1のmRNA発現をRT-PCR法で検証したところ、分離培養されたspheroidでALDH1活性が高いことが確認でき、これらが食道癌幹細胞としての性質を有することを確認した。次に樹立された癌幹細胞2株と、由来となったTE4、TE8との間での遺伝子発現の差異を網羅的遺伝子解析(マイクロアレイ法)により解析したところ、複数のイオン輸送体が高発現していることが判明した。特に細胞容積調整に関与するNKCC1、アポトーシスの制御に関連する細胞内カルシウムイオン濃度を調整するATP2A1(SERCA1)が高発現していることに注目した。我々は既にこのNKCC1が胃癌・食道癌において細胞周期の調整に関連することをしている(J Physiol Sci. 2006, World J Gastroenterol. 2014)。NKCC1の特異的阻害剤としてFurosemideを、ATP2A1の特異的阻害剤としてThapsigarginを見出した。今後は、これらの試薬を投与した際、癌幹細胞に対する抗腫瘍効果(Sphere formation、細胞周期、アポトーシス誘導)について評価を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時には、平成29年度では、1. ヒト食道癌細胞株、手術切除組織からの癌幹細胞の分離と細胞株樹立、2. 食道癌幹細胞の網羅的遺伝子解析と、標的分子(主にイオン輸送体)の探索、3. 癌幹細胞のアポトーシス性細胞容積減少(AVD)の観察と細胞内イオン濃度の測定、4. 候補分子(イオン輸送体)とアポトーシス性細胞容積減少 (AVD)に注目した、癌幹細胞におけるアポトーシス回避機構の解明、の4点を施行予定であった。現時点では、平成29年度、1,2の項目、さらに平成30年度、1の一部が完了している状況である。以上よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績でも記載した候補遺伝子、NKCC1 ATP2A1に対する標的薬剤、Furosemide、Thapsigarginを用いて、癌幹細胞におけるsphere形成能、細胞周期、アポトーシス誘導への影響を評価する。さらにはこれらが、癌幹細胞特異的に効果があることを確認するため、同試薬を元の起源であるTE4、TE8通常食道癌細胞株にも投与し、ALDH1発現細胞集団の分布の変化の評価を行う。また、siRNAを用いたNKCC1、ATP2A1 knockdown実験も同様に行い、同様の抗腫瘍効果があるか否か評価を行う。癌幹細胞特異的に効果を示すならば、一般的な化学療法(5-FUやcisplatin)と併用することで、相乗的な抗腫瘍効果を示す可能性があり、細胞株に対して併用療法の効果、ヌードマウス皮下腫瘍モデルにおける併用療法を行った場合の腫瘍形成能の差異の検証を行う予定である。
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