2017 Fiscal Year Annual Research Report
Storage and Release of Small Molecules with a Cyano-Bridged Polynuclear Metal Complex
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17H07020
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
田部 博康 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 特任助教 (50803764)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | シアノ架橋錯体ポリマー / 配位高分子 / シグナル分子 / 一酸化窒素 / アンモニア |
Outline of Annual Research Achievements |
アンモニアや一酸化窒素、一酸化炭素といった有害ガス分子が、生体中では、情報伝達分子(シグナル分子)となることが知られている。したがって、適切な量のシグナル分子を、適切な量、タイミングで生体に導入することで、分子生物学研究や医療といった用途に利用できる。そこで、ガス分子を大量かつ安定に固定し、望みの位置で外部刺激によって放出できる材料が必須である。このような機能を持つ材料を設計するため、シアノ架橋錯体ポリマーに注目した。シアノ架橋錯体ポリマーのジャングルジム型の分子ネットワークは、金属イオン同士を繋ぐCN配位子で構築されている。このCN配位子の構造や大きさは、シグナル分子であるNH3分子やNO分子、CO分子に類似している。したがって、CN配位子の一部をこれらの分子に置換することで、容易かつ高密度でシグナル分子を固定化できる。 初年度は、まず、シアノ架橋錯体ポリマーを構成する金属イオンが、反応特性に与える影響について検討した。その結果、高い酸化数をもつ金属イオンを含むシアノ架橋錯体ポリマーが、外来分子の吸脱着を伴う触媒反応を高効率に進めることを見出した(論文投稿中)。 続いて、生理活性ガス分子である一酸化窒素(NO)分子を含むシアノ架橋錯体ポリマー{MN[MC(NO)(CN)5]}n(MN、MCはそれぞれ、シアノ架橋配位子のN分子、C分子が配位した金属イオンを示す)、アンモニア(NH3)分子を含むシアノ架橋錯体ポリマー{MN[MC(NH3)(CN)5]}nをそれぞれ合成した。NH3配位子やNO配位子がシアノ架橋錯体ポリマーの構造中に取り込まれたことを、各種分光測定により明らかにした。これらの配位子は架橋配位構造を取らないため、配位子交換反応により容易に脱離し、NH3ガスやNOガスとして取り出すことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は、まず、シアノ架橋錯体ポリマーについて基礎的な知見を得るため、シアノ架橋錯体ポリマーを構成する金属イオンが、反応特性に与える影響について調査した。その結果、高い酸化数をもつ金属イオンを含むシアノ架橋錯体ポリマーが、エステル分子の吸脱着を伴う触媒的加水分解反応を効率的に進めることを確認した(論文投稿中)。 続いて、シグナル分子である一酸化窒素(NO)分子を含むシアノ架橋錯体ポリマー{MN[MC(NO)(CN)5]}n(MN、MCはそれぞれ、シアノ架橋配位子のN分子、C分子が配位した金属イオンを示す)、アンモニア(NH3)分子を含むシアノ架橋錯体ポリマー{MN[MC(NH3)(CN)5]}nの合成は完了した。当初、これらの化合物は、架橋部位であるCN配位子の数が一般のシアノ架橋錯体ポリマー({MN[MC(CN)6]}n)よりも少なく、当初、架橋化がうまく進行しなかった。しかし、架橋化のための前駆体濃度、温度等を検討することで、架橋化が進行し、生成物に由来する沈殿が得られることが確認できた。得られた沈殿は、赤外吸収スペクトル、X線粉末回折測定、窒素吸脱着測定等でキャラクタリゼーションし、望みの組成、構造をもつシアノ架橋錯体ポリマーであることが確認できた。さらに、MN、MCとして、生体毒性の低い鉄イオンを用いていたが、生体内の酵素で用いられている亜鉛イオンや銅イオンといった金属イオンに置き換えた際も、同様の組成や構造を持つシアノ架橋錯体ポリマーが合成できることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ガス分子放出反応の条件最適化 初年度合成したシアノ架橋錯体ポリマーからの、シグナル分子放出条件をスクリーニングする。シアノ架橋錯体ポリマーへの近紫外~赤外領域の光照射、弱酸性~弱塩基性の各pHの緩衝溶液への浸漬、および酸化剤や還元剤の添加といった外部刺激により、シグナル分子が効率的に放出される条件を見出す。アンモニアの放出量は、紫外可視分光光度計を用いたインドフェノール法にて決定する。また、一酸化窒素分子の放出量は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定する。
(2) MN、MCの置換によるガス分子放出速度の制御 金属イオンとガス分子の配位結合の強さは、金属の電子状態に大きく依存する。したがって、シグナル分子の放出速度や外部刺激応答性は、MN、MCの置換により制御できると考えられる。スクリーニングの結果からMNおよびMCに用いる金属イオンを適切に選択することで、望みの外部刺激応答性を有するシアノ架橋錯体ポリマーを設計する。
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Research Products
(17 results)