2017 Fiscal Year Annual Research Report
心臓浮腫の多角的病態解析およびvisualizationを利用した重症度の評価
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17H07021
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
池田 知哉 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (10620883)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 浮腫 / 免疫染色 / 血管傷害マーカ / 炎症マーカ / Computed Tomography |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「心臓浮腫の多角的病態解析および浮腫のvisualizationを利用した重症度の評価」を行うことにある.浮腫の初期変化や遷延的変化を肉眼病理学的所見のみから,その重症度を評価することは困難である.そこで,浮腫の重症度判定のために,生化学的・分子生物学的,さらには画像解析学的に評価法について検討した.今年度は,浮腫の形成機序に関与すると考えられる炎症,血管透過性亢進,酸化,細胞血管傷害,蛋白変性などの中から,炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL-6),中枢神経系の髄鞘を構成する主要タンパクであるミエリン塩基性タンパク(MBP)および神経細胞由来の解糖系酵素である神経特異エノラーゼ(NSE)に注目し,生化学的および免疫組織科学的観点から,心臓浮腫の発生機序について解析を行った. 生化学的検査の結果,IL-6は,頭部外傷において,脳脊髄液中の濃度が高値を示し,右心血中では,やや高値を示すものの,非頭部外傷や窒息などにおいても高値を示しており,有意な差は認められなかった.NSEは,頭部外傷に伴う脳浮腫が認められる症例および中毒症例において,脳脊髄液中の濃度が高値を示した.一方,右心血中では,有意な差は認められなかった.MBPは,中毒症例において,脳脊髄液中の濃度が高値を示し,右心血中では有意な差は認められなかった.心臓における各種マーカを用いた免疫染色の統計学的解析は終了していないものの,中毒死例において全般に染色性が濃く認められた.本結果は,中毒死の際に生じる浮腫の原因としては,循環障害や炎症によるものよりも,神経障害が主体の病態である可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在,体液中(脳脊髄液および血液中)の炎症,構造蛋白および機能蛋白の変化について一定の見解を示すことができていると考えている.本調査結果は,今後国際学会などで発表していく予定である.一方で,病理組織学的検討の結果については,現在進行中の状況であり,特に,頭部外傷症例における数値的評価について検討を行っている.症例数に関しては,一定数の解析は終了しているものの,病態間で症例数にばらつきが生じている.そのため,今後適切な統計学的解析法を検討していく必要があるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,体液中のマーカの変化について調査を行い,一定の結果を認めた.これらの結果が,病理組織学的変化と相関するのか否かについて,免疫染色などを主体として検討していく予定である.更に,各臓器における蛋白質の発現状況について,mRNA,ウエスタンブロットなどを用いて検討をする必要があるものと考えている.一方,浮腫の簡易評価法としての画像解析については,CT画像による解析を既に進めており,下肢の外表面からの主観的評価による評価と,Computed Tomography(CT)により,水分量や蛋白などをCT値の設定により客観的に評価を行い,2つの評価を比較することで,評価の相関について検討している. 今年度の初めには,適切なCT値を設定し,実際の測定を進行していくことで,症例数を増加させていく予定である.得られたデータを整理して,国際学会への発表および国際誌への論文執筆を行う予定である.
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