2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H07024
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西出 峻治 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 医員 (10803132)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | がん微小環境 / 腫瘍免疫 / PHD阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍組織内の血管は正常な血管と異なり、脆弱かつ不規則に走行し血流が乏しい。それ故、腫瘍組織は低酸素・低栄養かつ、間質圧が上昇しており、がん微小環境と呼ばれる特殊な環境を形成している。こうした環境では薬物送達の効率が低下するだけでなく、化学療法や放射線療法などの治療抵抗性の一因となっている。さらにがん微小環境では、マクロファージやT細胞の抗腫瘍効果が抑制される。このため、がん微小環境は腫瘍免疫を抑制する一因となっている。 近年、免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法が注目されているが、多くのがんでの奏効率は10~30%前後であり十分ではない。そこで免疫療法の効果を上げるためには、免疫細胞が腫瘍組織において十分に機能するように、がん微小環境を改善させることが重要と考える。申請者らのグループではマウス腫瘍移植モデルにおいて、低酸素誘導因子(HIF)を安定化させるPHD阻害薬を用いることで腫瘍血管を正常化し、がん微小環境を改善させ、低用量の抗癌剤にても腫瘍増殖を抑制する効果を明らかにした。さらにin vitroではPHD阻害薬が免疫細胞細胞の活性を促進するとの報告もあり、PHD阻害薬の腫瘍環境の改善との相乗効果も期待できる。そこで本研究の目的はPHD阻害薬を用いることによる腫瘍環境の改善が腫瘍免疫を活性化するか否かを明らかにすることである。本研究によってがん微小環境を標的としたがん免疫療法の新たな治療戦略が拓かれると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1-1. PHD阻害薬投与による腫瘍血管の構造変化の評価をおこなった。マウスの皮下に腫瘍細胞を移植したマウス腫瘍移植モデルにおいて、PHD阻害剤を投与後、腫瘍を摘出し、免疫染色にて腫瘍血管の構造的、機能的変化を評価した。構造的変化は血管内皮細胞マーカーであるCD31で免疫染色し、血管密度、血管数、血管径を評価した。また、ZO-1染色にて血管内皮細胞のタイトジャンクション、NG-2染色にて血管周皮細胞が血管内皮細胞を覆っているか否か解析することにより腫瘍血管正常化の評価した。申請者はPHD阻害薬投与により血管が正常化する癌腫を一つ見出した。 1-2. PHD阻害薬の投与による腫瘍血管の機能変化の評価。マウス腫瘍移植モデルにおいてPHD阻害剤を投与したのち、正常血管では血管外漏出しない蛍光標識高分子量デキストランを尾静脈より投与した。デキストランが組織に灌流された時点で組織を摘出し凍結切片を作製した。蛍光顕微鏡にて組織上の蛍光領域を検出し、定量評価することにより組織灌流性および血液の血管外漏出の評価を行った。 2. PHD阻害薬による腫瘍血管の正常化が、がん微小環境を改善するか否か評価を行った。腫瘍内の低酸素領域をがん微小環境の指標とし、これを検出・評価することによりがん微小環境の改善がなされたか否か評価を行った。PHD阻害薬の投与により腫瘍血管の正常化が生じるマウス腫瘍移植モデルにおいてPHD阻害薬を投与後、低酸素プローブのピモニダゾールを投与した。腫瘍組織内に取り込まれたピモニダゾールを検出することにより腫瘍内の低酸素領域の評価を行った。申請者は予備実験において、PHD阻害薬の投与により腫瘍血管が正常化すると腫瘍組織の低酸素領域が減少することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. PHD阻害薬によるがん微小環境改善により、免疫細胞や免疫抑制補助シグナルが変化するか評価する。 1-1. がん微小環境改善による免疫細胞の細胞数、割合、活性の評価 マウス腫瘍移植モデルにおいてPHD阻害剤を投与後、マウスの血液中、腫瘍組織において免疫細胞( T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージなど)の細胞数や各集団の割合についてフローサイトメーターを用いて解析・評価を行う。申請者は腫瘍組織を単細胞化し、フローサイトメーターにて解析する事が可能である。 1-2. がん微小環境改善による免疫抑制補助シグナル発現変化の評価 マウス腫瘍移植モデルにおいてPHD阻害剤を投与した後に腫瘍組織を摘出し、免疫抑制補助シグナル発現の変化を免疫染色、フローサイトメトリーにて評価する。 2. PHD阻害薬に免疫チェックポイント阻害薬を併用することで抗腫瘍効果を高めることができるか検証する予定である。
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