2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H07027
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中村 純 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 客員研究員 (90804518)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 粥状動脈硬化 / ApoEノックアウトマウス / リジン付加体 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化された低比重リポ蛋白(oxLDL)が動脈壁に蓄積し、慢性炎症を引き起こすことにより粥状動脈硬化を惹起することが知られている。本研究では、我々は脂質過酸化で生じるマロンジアルデヒド(MDA)とMDAの分解物のアセトアルデヒドがリジンの側鎖と反応して生じる1,4-dihydropyridine型の付加体(M2AA、別名MAA)に注目し、M2AAに対する自然免疫が粥状動脈硬化の発現に大きな影響を及ぼしていると仮説を立てた。本年度は粥状動脈硬化を若齢で起こすApoE欠損マウスのM2AA付加体に対する抗体価の推移に関して以下の成績を得た。 ①リジンのアナログであるε-アミノカプロン酸を用いてM2AAを精製し、ウシ血清アルブミンに結合させた純度の高いM2AA抗原を作製する方法を構築した。その抗原を用いてM2AA付加体に対する各(サブ)クラス(IgG, IgM, IgA, IgG1, IgG2a, IgG2b, IgG3)の抗体価をELISAで測定する方法を確立した。 ②M2AA-ELISA法を用いてApoE欠損マウスおよび野生型マウスの血液中のM2AAに対するIgG/IgM抗体の経時的な変動を2か月齢から5か月齢にかけて測定した。ApoE欠損マウスの動脈硬化の発症前の2か月齢の血液中には、抗M2AA-IgG/IgMの増加は認められなかった。一方、動脈硬化を発症する3および4か月齢で抗体価の著しい上昇が認められた。 以上のように、ApoE欠損マウスのM2AA付加体に対する抗体価の推移を明らかにするためのELISA法を作製し、ApoE欠損マウスのM2AA付加体に対するIgG/IgM抗体価の変動を明らかにした。今後は、IgGのサブタイプ、IgAおよびIgEの抗体価の変動を明らかにするとともに、高純度M2AA付加体の投与による免疫亢進が動脈硬化を防ぐか否かを明らかにするための実験を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はA) ApoE欠損マウスのM2AA付加体に対する抗体価の推移を明らかにするためのELISA法の作製およびB) ApoE欠損マウスのM2AA付加体に対するIgG/IgM抗体価の変動の測定を行った。A)のM2AAに対する抗体価のELISA法の作製では、精製したM2AAをウシ血清アルブミンに化学的に結合させた高純度の抗原を用い、M2AA付加体に対する各(サブ)クラス(IgG, IgM, IgA, IgG1, IgG2a, IgG2b, IgG3)の抗体価をELISAで測定する方法を確立した。高純度のM2AA抗原を固相化したELISA法は世界に先駆けて開発した方法であり、しかも各サブタイプを正確に測定した報告はこれまでになく、独創性のある研究成果である。B)のApoE欠損マウスのM2AA付加体に対する抗体価の変動に関しては、ApoE欠損マウスの粥状動脈硬化の早期(3から4か月齢)に抗M2AA-IgG/IgMの顕著な上昇を認めたものの、5か月齢には野生型マウスの抗体価と比べ有意な増加を認めなかった。同様な推移はoxLDLの変動にも認められており、oxLDLの上昇同様、M2AAに対するIgG抗体の上昇は粥状動脈硬化の早期検出のバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。今後、ApoE欠損マウスの血液中のM2AAに対するIgGのサブタイプ、IgAならびにIgEの抗体価を測定し、3か月齢以降持続して上昇が認められる抗M2AA抗体が存在するか否かを検討する。 また、ノースキャロライナ大学のXianwen研究員との共同研究を実施し、ApoE欠損マウスに抗酸化作用をもつ物質を過剰に発現させたマウスの血液中の抗M2AA抗体価を定量した。その研究論文は現在投稿中である。 以上のように、平成29年度に計画していた実験はおおむね計画どおりにすすんでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年度は前年度に引き続き、①ApoE欠損マウスおよび野生型マウスの血液中の抗M2AA抗体の経時的な変動を解析し、さらに、②高純度M2AA付加体の投与による免疫亢進が動脈硬化を防ぐか否かを明らかにする。 ①ApoE欠損マウスの血液中のM2AAに対するIgGのサブクラス(IgG1, IgG2a, IgG2b, IgG3) およびIgA、 IgE抗体の抗体価を測定する。 ②ApoE欠損マウスに高純度M2AA-BSAを1.5か月齢から5か月齢まで皮下投与(投与開始1か月間は毎週1回、その後月1回)する。2か月齢以降、月1回、尾の先端より少量の血液を採取し血漿を分離し、分離した血漿を用いて、M2AAに反応する抗体価をそれぞれのクラス(IgG, IgM, IgA, IgE)とサブクラス(IgG1, IgG2a, IgG2b, IgG3)について測定する。また、血漿中脂質パラメーターおよび、M2AA-LDLを測定する。6か月齢に深麻酔下で全血を採血し、摘出した心臓の連続切片を作製し、心臓弁のプラークをH&E染色で、免疫組織染色でM2AA付加体量を半定量的に観察する。大動脈のオイルレッドO染色で肉眼的な粥状硬化部位の頻度を解析する。 得られた研究成果を学会発表及び論文発表するとともに総合的に考察し、M2AAに対する(サブ)タイプの抗体価が粥状動脈硬化の早期検出に有用なバイオマーカーとなりうるか否かを明らかにするとともに、高純度M2AA付加体のワクチンによる免疫亢進が動脈硬化を防ぐ可能性を明らかにする。
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Research Products
(1 results)