2017 Fiscal Year Annual Research Report
漢字とカタカナの処理の違いに関する音韻隣接語効果の検討
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17H07064
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
楠瀬 悠 文京学院大学, 人間学部, 助手 (50732690)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 音韻隣接語 / 漢字表記語 / 仮名表記語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,仮名表記語と漢字表記語の読みの性質について,漢字語とカタカナ語が持つ音韻隣接語によって検討するものである。仮名表記語と漢字表記語は,文字と音の一貫性の差異によって処理が異なると言われてきたが,最近,Hino, Kusunose, Lupker & Jared (2013)は,カタカナ語も漢字語と同様に,形態情報から直接,意味情報へアクセスしていると報告している。この結果は,カタカナ語から漢字語および漢字語からカタカナ語の音韻情報は活性化しているのかという新たな問題を提起している。そこで,本研究では,漢字語およびカタカナ語の音韻隣接語の数や漢字語におけるカタカナ語の音韻隣接語・カタカナ語のおける漢字語の音韻隣接語などを用いて,漢字語とカタカナ語の語彙表象の特徴を明らかにすることを目的とした。 平成29年度は研究1として、アルファベット表記で観察されている音韻隣接語数による効果が、漢字語とカタカナ語でも観察されるかどうか検討を行った。それぞれの表記における実験では,音韻隣接語数が多い条件と少ない条件について,語彙判断課題と音読課題を用いて比較した。その結果、漢字語では,語彙判断課題において音韻隣接語数が多い条件が少ない条件よりも反応時間が短くなる促進効果が観察されたが、音読課題では音韻隣接語数による効果は観察されなかった。一方、カタカナ語では,語彙判断課題において音韻隣接語が多い条件に反応時間が長くなる抑制効果が、音読課題では語彙判断課題と逆に促進効果が観察された。 これらの結果は,アルファベット表記と同様に,漢字語とカタカナ語における音韻隣接語の活性化が生じていることを示していた。また、漢字語とカタカナ語における音韻隣接語数による効果の違いは、課題の性質と形態隣接語と音韻隣接語の数の一致度によるものだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の実験予定では,全ての研究課題に語彙判断課題のみを使用する予定であったが,音韻情報を取り扱っている研究であることを鑑みて,急遽音読課題も実施することとした。このことにより,全体的に予定が押している。 さらに、本年度、研究2である漢字語とカタカナ語の音韻隣接語による親近性効果の違いを明らかにする実験を行う予定であったが,刺激の選定に時間がかかっている。刺激の選定では,漢字語におけるカタカナ語の音韻隣接語とカタカナ語における漢字語の音韻隣接語の親近性を操作するため,それぞれの音韻隣接語を探し出し,それを表記ごとに分類する必要がある。この中で,漢字語は非常に音韻隣接語の数が多く,刺激の候補を作成するだけで非常に時間を要したため,漢字語の実験実施に遅れが生じている。一方,カタカナ語の刺激選定は終了しており,実験をすでに実施し始めている。 以上のことから総合的にやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,遅れている研究2の漢字語における音韻隣接語の親近性効果の実験を行い,これらの結果についての学会発表また論文投稿を行っていく。それに加え,予定していた研究3と研究4を実施し,こちらもまとまり次第発表を行っていく。研究3の音韻隣接語を用いたマスク下のプライミング効果の実験および研究4の音韻隣接語を用いた漢字語とカタカナ語の意味検索経路の検討においては,研究2で行った刺激候補の分類が終了しているため,すぐに刺激を選定することが可能であることから,直ちに実施できるものと思われる。そのため,実験計画に大きな変更点は無い。
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