2017 Fiscal Year Annual Research Report
Characterizations of Galois representations associated to Hilbert modular forms
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17H07074
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
吉川 祥 学習院大学, 理学部, 助教 (10803736)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 楕円曲線 / Galois表現 / Hilbert保型形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、総実代数体上の楕円曲線とヒルベルト保型形式とのある種のつながりを研究した。このつながりは「楕円曲線の保型性」と呼ばれる。有理数体上のあらゆる楕円曲線が保型性をもつという主張は「志村谷山予想」と言い、志村谷山予想の(大部分の)解決によって有名なフェルマー予想が証明されたという意味でインパクトの大きいトピックである。それだけではなく、志村谷山予想は整数論における大きな目標である「ラングランズ・プログラム」の一部として組み込まれ、整数論的に非常に重要な位置を占めている。本研究は、その最も自然な一般化を示すことを目標としている。 吉川が以前得た結果として次がある:「総実代数体が3,5,7で不分岐かつ有理数体上アーベル拡大ならば、その体を定義体とするあらゆる楕円曲線は保型性を持つ」。この結果において、定義域がアーベル拡大であるという仮定は非常に厳しいものである。この仮定を緩めることが出来れば、保型性の分かっている楕円曲線のクラスが格段に広がる。そこで本年度の当初の目標として、まず、次数が低く非アーベルな総実代数体の具体例をいろいろと考え、それ上の楕円曲線の保型性を個別に示すことを目指していた。 しかし、Jack Thorne氏による保型性持ち上げ定理を利用することにより、低次数の体にこだわることなく、次の結果が言えるだろうという見通しが立った:「総実代数体が3,5,7で不分岐で、完全分解する素点v|22が存在すると仮定する。このとき、vで潜在的良還元を持つ楕円曲線は保型的である」。 この結果について、九州代数的整数論2018において講演し、経過報告を行った。細かい仮定のチェックをすみやかに行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定義体が低い次数の総実代数体の場合に楕円曲線の保型性を調べる予定であった。しかし、結果的にかなり一般の総実代数体の場合に保型性が扱えたため、当初の予定よりはるかに良い結果が得られたと言える。しかし、細かな条件のチェックがまだ残っていることと、楕円曲線自体に条件(潜在的良還元)を課してしまっているという点で、完全に遂行できたとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、Thorneの保型性定理を適用するための細かなチェックを行う。これについては特に困難は現れないと思われる。そののちに、楕円曲線の潜在的良還元についての仮定を落とす方法を模索する。これと同時に、当初の2年目の研究計画に述べた「法p表現と法q表現に関する同時潜在的保型性」について着手する。
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