2017 Fiscal Year Annual Research Report
マルコフ連鎖解析に基づく非正則・動的ネットワーク上負荷分散アルゴリズムの理論保証
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17H07116
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
白髪 丈晴 中央大学, 理工学部, 助教 (50803996)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | マルコフ連鎖 / 負荷分散 / 拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では, 主に確率的な負荷分散アルゴリズムの性能保証について研究を行った. 特に, 拡散ベースのアルゴリズムにおいて研究を行い, 以下の成果が得られた. まず, 正則グラフ上において, 誤差が高確率で次数の劣線形オーダーとなるアルゴリズムの設計に成功した. 既存研究において, 拡散ベースのアルゴリズムは全て次数の線形オーダーであり, 負荷数に特殊な過程を加えないものに対しては初となる劣線形誤差のアルゴリズムとなる. このアルゴリズムでは, 負荷の約半分を近傍へなるべく均等にばらまき, 約半分を保持するという, 「lazy」なマルコフ連鎖の性質を用いることによ劣線形負荷ギャップを達成する. 更に, 設計したアルゴリズムの一般の遷移確率に対応するモデルへの拡張と解析にも成功した. これにより, 正則でないグラフ上においても, 頂点の2近傍までの情報を用いることで負荷ギャップが最大次数の劣線形オーダーとなるアルゴリズムの設計が可能となる. 驚くべきことに, 提案アルゴリズムは既存研究において誤差を小さくするためにしばしば仮定される「負の負荷」を用いることなく上記の上界を達成し, 更に負の負荷を仮定するものと同じ上界を達成する. これらの進展は, l2-divergenceと呼ばれる確率行列に対する特徴量の解析技法の洗練から来ている. 既存研究において, この特徴量の解析は単純な確率行列のみにしか出来ていなかったが, 本研究において一般の可逆な確率行列において上界の導出に成功した. これらの成果は現在国際会議へ投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの進捗により, 負荷分散アルゴリズム解析において, 非正則なグラフ上でもマルコフ連鎖の解析技法に基づき誤差の査定が上手く行えることが分かり, 研究はおおむね順調に進展していると言える. 特に, 前述したl2-divergenceの解析では, 既存研究で行われた解析は正則グラフにおいてのみ行われているにも関わらず非常に煩雑であり直観が非常につかみづらかったことに対し, マルコフ連鎖の可逆性を用いることで単純な式展開のみで解析が可能となり, より本質的な性質が浮き彫りとなった. 更に, アルゴリズム設計において負荷拡散時に用いる確率変数の独立性が解析時に大きな役割を果たすことが判明した点は大きい. これまでの成果において, 拡散ベースのアルゴリズムは次数の線形オーダーの負荷ギャップを切ることは困難と考えられていたが, その原因は主に相互に依存する確率変数にあり, この問題を解決出来たことにより今後の研究が大きく進展しうる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗を受け、以下の方針で研究を進める. まず, 非正則なグラフ上において, タイトな負荷ギャップの導出があげられる. ここまでの進捗により非正則グラフ上において, 既存研究を大幅に上回る誤差の査定が出来たが, 依然として定数負荷ギャップが達成できるか否かについては明らかになっていない. 解析技法は十分整いつつあり, この課題をまず拡散ベースのアルゴリズムに対し明確にすることが求められる. 既存研究で解析が為されているマッチングベースのアルゴリズムに対しても非正則グラフ上で解析を進め, 定数負荷ギャップの達成を目指す. 次に, 動的なネットワーク上における負荷分散アルゴリズムの解析を行う. 現実的な応用もさることながら, 動的な環境下における負荷の拡散解析はランダムウォークの全訪問時間やクラスタリング等理論的にも多くの興味深い関連をもち, 研究の進展が大きく望まれる. 研究の進行方法としては, まず既存のアルゴリズム, 即ち拡散ベースアルゴリズムとマッチングベースアルゴリズムに対し解析を行い, タイトな上下界の導出を目指す. 解析の中でアルゴリズムの改善を図り, 定数負荷ギャップが達成できるか否かについて明確な議論を行う. 動的ネットワーク上や, 下界の導出について, アルゴリズムの実装は比較的容易であるため, まず実装を行い, アルゴリズムの挙動について直観を得ることから始める.
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Remarks |
本研究に関連する, ランダムウォーク, ロータールーターモデル, 確率的投票モデルのシミュレーションを公開している.
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Research Products
(6 results)