2017 Fiscal Year Annual Research Report
脳に対する超音波薬物送達システム構築に向けたマイクロバブルの開発
Project/Area Number |
17H07119
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小俣 大樹 帝京大学, 薬学部, 助教 (80803113)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロバブル / 超音波 / 脳 / ドラッグデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
脳への薬物送達のために、超音波造影剤 (マイクロバブル) と超音波を用いた血液脳関門 (Blood Brain Barrier; BBB) オープニング技術が注目されている。本研究では、BBBの透過性を亢進するために最適化したマイクロバブルの調製を行う。 本年度はBBBオープニングに影響を及ぼすと考えられるマイクロバブルの安定性について検討した。マイクロバブルの内包気体や粒子サイズは安定性に影響を与える要因となる。そこでまず、内包気体として臨床で使用されているパーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、六フッ化硫黄を用いて、外殻成分が同一のマイクロバブルを調製した。In vitroおよびIn vivoにおいて、調製したマイクロバブルの安定性について超音波造影輝度を指標に評価した。その結果、六フッ化硫黄を内包したマイクロバブルにおいて、造影輝度が最も速やかに低下した。これは六フッ化硫黄の水への溶解度が高いため、マイクロバブルから周囲の水へと溶解しやすかったためと考えられた。次に、マイクロバブルの粒子サイズの安定性への影響について検討した。粒子サイズの異なるマイクロバブルを調製するために、浮遊速度の違いに注目し、遠心力を利用した精製方法の最適化を行った。その結果、平均粒子サイズの異なるマイクロバブルを調製することができた。内包気体および平均粒子サイズが異なるマイクロバブルのIn vitroでの安定性を評価した結果、いずれの気体においても平均粒子サイズが小さいマイクロバブルでは、造影輝度が速やかに低下した。以上のことから、パーフルオロカーボンを内包し、粒子サイズの大きいマイクロバブルは安定性が高いことが示唆された。来年度は調製したマイクロバブルのBBBオープニングへの影響を評価していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は異なる気体を内包したマイクロバブルと粒子サイズが異なるマイクロバブルを調製し、その安定性を評価した。その結果、内包気体および粒子サイズがマイクロバブルの安定性に影響を与えることを確認し、安定性の高いマイクロバブルを調製可能となった。BBBオープニングにおいて、マイクロバブルの安定性は超音波に対する応答性に影響すると考えられ、また、超音波照射のタイミングの決定のために重要となる。本年度は実際のBBBオープニング効率および傷害性を検討しなかったが、次年度予定していた粒子サイズの異なるマイクロバブルの調製を行った。そのため、次年度以降にBBBオープニング効率および傷害性を検討することで、当初の検討項目をほぼ進められると想定しており、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
調製したマイクロバブルを使用してIn vitroで超音波に対する応答性を評価する。また、In vivoにおいて、調製したマイクロバブルと超音波を併用したBBBオープニングについてモデル薬物の脳への移行を指標に検討する。脳組織から薬物を抽出し定量的な解析を行うとともに、組織切片を作製し薬物の分布を観察する。さらに、脳に対する傷害性について神経細胞の変性を指標に組織化学的解析により評価する。得られる結果をもとに、安全性が高く効率的にBBBオープニング可能なマイクロバブルの構成成分および物性を明らかにし、最適化されたマイクロバブルの開発につなげる。
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