2017 Fiscal Year Annual Research Report
常緑性ツツジにおける花冠の着色および枝変わりによる花模様形成の機構解明
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17H07141
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水田 大輝 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (30595096)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 常緑性ツツジ / 色素合成関連遺伝子 / 花色 / 多様化 / 枝変わり |
Outline of Annual Research Achievements |
常緑性ツツジにおける花色多様化のメカニズムを分子レベルで明らかにするため、まずはシアニジン系色素を有する赤色花のヤマツツジとシアニジン系およびデルフィニジン系色素を有する紅紫色花のミヤマキリシマを用いて実験を行った。これまでの研究でミヤマキリシマのようなデルフィニジン系色素を有する個体では、アントシアニン生合成関連遺伝子のフラボノイド3’,5’-水酸化酵素(F3’5’H)遺伝子が必ず発現していることを明らかにしたので、F3’5’H遺伝子のDNA配列および遺伝子上流域の配列解析を行い、F3’5’H遺伝子の発現との関連を比較検討した。 複数のヤマツツジおよびミヤマキリシマのF3’5’H遺伝子のDNA塩基配列を調査したところ、2つのエキソン(約0.9および0.65kb)と1つのイントロン(約2.0kb)を持ち、エキソン部分については、既にDDBJ(GenBank)に登録されている常緑性ツツジ‘大紫’のF3’5’H遺伝子cDNA配列と99%の高い相同性を示した。F3’5’H遺伝子の発現がないヤマツツジにおいても、ゲノム上でF3’5’H遺伝子の配列を有することが明らかになった。 ゲノムウォーキング法によりF3’5’H遺伝子の上流域をPCR増幅すると、 F3’5’H遺伝子が発現していないヤマツツジでは、発現していたミヤマキリシマと比べて500bpほど大きい増幅産物が確認された。また、ヤマツツジおよびミヤマキリシマの上流域の塩基配列(800bp)を比較したところ、塩基置換、挿入または欠損がみられたが、判明しているアントシアニン合成関連MYBのシスエレメント、TATA boxおよび転写開始点は保存されていた。 これらの結果より、F3’5’H遺伝子の発現の有無の差は、F3’5’H遺伝子における一部の塩基置換やその上流域における配列の差異が原因である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
常緑性ツツジの花色多様化の一つである赤色花と紅紫色花の違いにおける分子レベルでの解析については、滞りなく進んでいる。一方、易変性変異である枝変わりの白色花や赤色花、絞り花、覆輪など花色・模様の多様化に関わるメカニズム解明の実験については、昨年度、常緑性ツツジの栽培環境が変化したことから、植物材料が害虫による食害を受けたり一部枯死する等によりほとんど花芽を付けず開花しなかったため、サンプリングが出来ず実験を進められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
花色多様化に関わる赤色花と紅紫色花の違いの原因を分子レベルで解析を進めているが、こちらは引き続きF3'5'H遺伝子の解析を中心に進める。 野生ツツジの安定した花色および易変性変異である枝変わりの白色花や赤色花、絞り花など花色・模様の多様化に関わるメカニズム解明の実験テーマにおいては、島根大学で維持・保存されている常緑性ツツジの一部確保や新たな枝変わり園芸品種の追加購入により、植物材料(花サンプル)の確保を確実に行う。それを踏まえた上で、安定した花色および枝変わりによる各花色、模様を有する花芽から全RNAを抽出して次世代シーケンサーによる発現遺伝子の網羅的解析を行い、各花における色素合成関連遺伝子の基本情報を収集し、花色多様化を引き起こす要因の探索を行う。また、野生種および園芸品種の表現型として花色の評価を行うと共に含まれる色素の分析も行う。
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