2017 Fiscal Year Annual Research Report
矯正力負荷によって惹き起こされる大脳皮質局所神経回路の変化の神経メカニズム
Project/Area Number |
17H07144
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
堀貫 恵利 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (30805990)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 歯根膜 / 矯正力 / カルシウム・イメージング / 大脳皮質 / 疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正治療を受ける患者の多くは治療後の痛みを訴えるが,中枢神経系に対するその影響については不明な点が多い。そこで本研究では,歯根膜刺激に対して生じる大脳皮質神経活動を各々の細胞単位で観察し,矯正力が大脳皮質局所神経回路に与える影響を明らかにすることを目的として実験を行った。 平成29年度は,対照群の動物を用いて二光子励起レーザー顕微鏡による細胞内カルシウム・イメージングを行い,大脳皮質体性感覚野および島皮質における歯根膜刺激に対する興奮性および抑制性ニューロンの応答性を検討した。さらに,矯正力を負荷したモデル動物を使用した実験を開始した。 本実験では,蛍光タンパク質VenusをGABA作動性ニューロンのVGATタンパク質に共発現するよう遺伝子改変したVGAT-Venusラットを使用した。観察領域は,我々が以前光学計測法を用いて明らかにした上顎臼歯歯根膜刺激時の応答中心部に設定した。カルシウム・イメージング終了後,各細胞におけるVenus,OGB-488,SR-101の発現をもとに細胞種の同定を行い,それぞれの細胞における歯根膜刺激時の応答を解析した。 細胞の種類を同定して解析を行った結果,本実験で観察したニューロンのうち,約80%が興奮性ニューロンで,約20%が抑制性ニューロンであった。興奮性および抑制性ニューロンのうち,約50%が上顎臼歯歯根膜刺激に対して明らかな応答を示し,細胞の種類による歯根膜刺激への応答性に大きな差は認められなかった。一方,本実験の観察領域では,下顎臼歯歯根膜刺激に対して応答を示すニューロンはわずか約3%であった。このことから,上下顎歯根膜感覚が大脳皮質において局在性を持って処理されていることが明らかとなった。 以上の結果を踏まえ,今後は矯正力負荷モデル動物における歯根膜刺激時の応答変化について検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に計画していた実験内容はおおむね完了している。 まず,対照群の動物での二光子励起レーザー顕微鏡による細胞内カルシウム・イメージングに成功し,蛍光タンパク質の発現をもとにそれぞれの細胞の種類を同定する方法を確立した。さらに,歯根膜刺激によって誘発された神経応答を細胞種別に解析し,それぞれの傾向を把握することができた。 現在は,次の段階として,矯正力を負荷したモデル動物を作成し,モデル動物におけるカルシウム・イメージングに着手しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成29年度に得られた研究結果をもとに,矯正力負荷モデル動物を用いて二光子顕微鏡による細胞内カルシウム・イメージングを行っていく予定である。 細胞の種類の同定や細胞種ごとのカルシウム応答の解析については,平成29年度に方法や基準を確立したため,同様の解析方法および基準を用いてモデル動物と対照群の比較を行い,矯正力に対する大脳皮質ニューロンの応答性の変化を詳しく検討していく予定である。
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