2017 Fiscal Year Annual Research Report
十八世紀京都画壇における植物イメージと異国表象に関する研究―伊藤若冲を中心に―
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17H07148
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
森下 佳菜 日本女子大学, 人間社会学部, 助教 (70802528)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 十八世紀京都画壇 / 異国表象 / 植物イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、十八世紀京都画壇が描いた植物イメージに関する背景と受容について、美術史的視点だけでなく文化史的視点からも探り、とくに異国趣味や異国認識が取り込まれたとみられる外来植物―熱帯植物を描いた伊藤若冲(1716-1800)の作品研究を通じて、十八世紀京都画壇のあり様を明らかにするものである。 本年度は主に「若冲が熱帯植物を描いた背景および十八世紀京都画壇の動向」をテーマとして、資料収集および作品調査・分析を行い、それに基づいた発表を行う計画だった。 まず、熱帯植物を含めた「外来植物」が描かれた若冲絵画のデータベースを作成した。当時の植物図譜など本草学に関する出版物を参考にしながら、若冲画における「外来植物」を抽出し、「作品名・材質・員数・作品年代・所蔵先」の基本情報を記述し、画題や形状などを分類・整理した。結果、若冲画において「外来植物」に該当する植物は多数を占めた。それは、当時の文化史的動向(黄檗宗の伝播や南蘋派絵画の流入、中国趣味の流行など)が背景として考えられる。とくに若冲画のなかでも、鹿苑寺大書院障壁画に描かれたモチーフは、同時期の『素絢帖』や『玄圃瑶華』といった若冲画譜と比較検討を行ったところ、異国イメージを表す植物として意識的に選択され、さらには障壁画全体が異国的な空間として機能することを期待されて描かれた可能性が高いことが明らかになった。これは、鹿苑寺障壁画の若冲画において新たな見解を提示するものであり、現在論文投稿に向けて執筆中である。 しかし、本研究では外来植物のうち、とくに「熱帯植物」に注目することを重要なテーマとしている。今後、若冲画における「熱帯植物」、さらには十八世紀京都画壇が描いた「熱帯植物」にも視野を広げ、受容者問題も含め多角的に調査・検討を継続して行うこととしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画よりも実際には学内の業務に時間を費やすことになり、結果として、本研究に取り組むための必要時間を確保することが困難だった。そのため、現在までの進捗状況はやや遅れていると言わざるを得ない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作成したデータベースや得られた成果などを踏まえながら、今後は、翌年度も継続して行うこととなった課題や、当初より計画していた翌年度の課題について、適宜軌道修正しながら着実に遂行していくこととしたい。また、本年度は調査機材として、デジタル一眼レフカメラを整備することができたため、翌年度は調査時間をできるだけ多く確保し、実見調査を十分に行い、今後の研究成果につなげていきたいと考える。
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