2017 Fiscal Year Annual Research Report
京都学派の行為論における創造と倫理:予測・制御不可能性としての「自然」に着目して
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17H07152
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
犬塚 悠 法政大学, 国際日本学研究所, 研究員 (80803626)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 環境倫理学 / 近代日本哲学 / 京都学派 / 和辻哲郎 / 西田幾多郎 / 三木清 / 田辺元 / 自然 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非人間中心主義をはじめとする環境倫理学の議論や、行為者を人間と物との複合体として捉える近年の哲学内外の研究動向を踏まえた上で、予測・制御の可能性の有無という観点から「自然」を再定義することである。その手掛かりとして、近年環境倫理学の分野でも注目されている和辻哲郎や、和辻と影響・批判し合う関係にあった西田幾多郎ら京都学派の哲学を扱う。 29年度は、計画通り和辻哲郎と西田幾多郎における自然論の比較考察を行った。その結果、(1)和辻倫理学における人間存在の一部としての自然・風土は反復性をもち、その反復性が社会的行為や信頼関係の倫理の基礎となっており、それに対して(2)西田哲学における自然は予測不可能な仕方で我々の身体を通して現れるものであり、それが芸術を含む創造行為につながっていることが見出された。 (1)に関しては、和辻の先行研究として重要なフランスのオギュスタン・ベルク氏の風土論との比較も併せて論文としてまとめ、風土論・環世界論をテーマとした仏語書籍の一章として出版された。(2)に関しては、11月にパリのフランス国立東洋言語文化学院にて開催されたEuropean Network of Japanese Philosophyの大会にて口頭発表を行った。当該内容については現在論文を準備中である。 また、2月には南山大学南山宗教文化研究所に2週間滞在し、資料収集と同研究所の研究者との意見交換を行った。この滞在によって、西田幾多郎に加え、当初の計画において検討不足であった田辺元について本研究課題に関連する資料や知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、環境倫理学と近代日本哲学研究の両者において最先端の研究となることを目指している。それぞれの観点において成果報告を行い、論文も出版されたこと、また同研究分野の国内外の研究者とのネットワークが形成されていることから、研究は順調に進行しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度も、近年の研究動向と照らし合わせながら、京都学派の哲学における自然論を分析する。前年度において明らかにされた和辻・西田における自然と我々の行為との関係に加え、彼らの哲学を受容した三木清の自然論に着目する。 8月には中国の北京で開催されるThe World Congress of Philosophyにおいて、9月にはドイツのヒルデスハイムで開催されるEuropean Network of Japanese Philosophyの大会において、それぞれ口頭発表を行う予定である。成果は論文としてまとめていく。
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Research Products
(3 results)