2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Study on Disability Policies in Japan and Mekong Countries
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17H07153
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐野 竜平 法政大学, 現代福祉学部, 准教授 (90805342)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 国際協力 / 障害と開発 / メコン川流域国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の特徴は、社会福祉の国際的な研究対象の主流であった欧米ではなく、あえてメコン地域諸国に焦点を当てることにある。2015年末に発足したアセアン共同体加盟国のうち、タイを除くメコン地域諸国において、障害者法および関連諸施策が過去10年で初めて制定・実施された。この点でまだ日本では深く研究が進んでいないため、まず初めに日本の厚生労働省および国際交流機構の障害関係の専門家と打ち合わせを行い、今後の調査に関する方針やポイントを協議した。同時に、日本で得られるデータおよび海外の状況を考慮し、比較可能な項目を精査した。研究開始時点で、すでにタイを含むメコン地域諸国は基幹となる障害者法を制定していたため、まず各国別の障害者法制度および諸施策の現状把握を行った。様々な事例に関する情報をできるかぎり文献やインタビューで整理しながら、最終的に共通軸で応用できる質問項目を明らかにした。ついで、タイの障害分野を担当する社会開発・人間の安全保障省の障害担当官に接触し、障害関連の法律や政策に関する情報を包括的に得ることができた。その内容の一部を、法政大学による2017年度現代福祉研究第18号を通じて発表した。一方、その他のメコン川地域諸国については、特に障害当事者で国レベルで活発に活動しているキーパーソンおよび大学関係者とコンタクトを取り、比較可能なデータ収集のポイントや論点を整理し、2年目以降の調査の土台を築いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本調査の目的を達成するために、研究計画に即して関係者と連携を取りながら研究を進めている。本研究の課題については、進捗状況に差はあるが着実に成果が得られている。以下に主な成果の概要を示す。 (1)メコン川地域諸国と日本の違いを視野に入れた調査票を作成し、その内容が適切かどうか確認した。厚生労働省および国際協力機構の障害専門家とも意見交換し、これまでの国際協力の結果を元に方向性を確認しつつ調査の全体像をデザインした。本調査は基本として英語で進めることになっているため、各用語の英語表記を確認した。また、内容面で理解に齟齬がないようにコミュニティのフィールド調査の専門家にも意見を聞いた。 (2)多言語の地域であることを念頭に、英語にて実務を進めるための現地のコミュニケーション上のパートナーを選定した。特に、テーマが障害であることから、障害当事者で各国の政策に通じたキーパーソンと接触し、協力への理解を得た。キーパーソンはすでに現地の関連政策にも通じていることから、彼らの持つ情報も貴重なものとして整理し、まとめた。 (3)メコン地域諸国で障害分野では比較的進んでいるタイについて、障害関連法や施策を整理した調査報告を英文で作成し、法政大学による2017年度現代福祉研究を通じて発表した。本内容はカンボジアおよびベトナムで行われた関係者向けのワークショップでも紹介し、各国との違いを聞き取る場を創出した。同時に、タイをベースにどこまで他のメコン地域諸国の障害関連施策を比較できるかタイ政府の関係者からコメントをもらい、本調査で達成しうる内容を精査した。
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Strategy for Future Research Activity |
各国の障害者法制度および関連施策の進捗状況について、域内の比較研究であることから、共通項目の設定に留意つつ、各関係者へのインタビューを進める。質問内容は、基幹となる障害者法の現状、基幹となる障害者法の重複・相違点、障害者計画等主要な関連施策の現状、障害者計画等主要な関連施策の重複・相違点などの項目を中心に行い、回答を得る。特に、障害当事者・家族団体については、しばしば障害種別毎に団体を設立する場合およびそれらを網羅したネットワーク型で活動している場合があるので、一定の基準を持ってコンタクトするように留意する。この段階までに学び得たことを活かし、研究報告書を完成させる。調査結果をまとめていく上で、関係者とのすり合わせを再度行う。こうしたプロセスにより、日本およびメコン川流域国全体の観点から、基幹となる障害者法、障害者関連諸施策および障害当事者・家族団体の現状および関連する諸問題を明示できるように留意していく。また、主要な研究結果は英文誌に投稿し、世界に情報を発信するようにする。なお、発表予定の英文誌については、メコン地域諸国で関連する複数の査読誌をリストアップしてあるが、研究を進めていく中で精査を続け、汎用性の高い英文誌を選択するようにする。
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Research Products
(2 results)