2017 Fiscal Year Annual Research Report
第一次世界大戦後の国際人道活動アクターの組織化と専門化―赤十字国際委員会を中心に
Project/Area Number |
17H07155
|
Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
舘 葉月 武蔵大学, 人文学部, 専任講師 (50803102)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | 赤十字国際委員会 / 国際法 / 人道活動 / 戦争捕虜 / 難民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、I 1920年代の国際会議や規約の設定を通して赤十字国際委員会がいかに組織化されたかを、国際政治の中に位置づけマクロなレベルで分析すること【赤十字国際委員会の組織化の検討】、II 同時期に人道危機解決のために派遣された調査団の活動内容や個々人の働きを通して、人道活動の専門化がいかに進められたかをミクロなレベルで検討すること【人道活動の専門化の検討】、の二方向で実施される。 初年度に当たる2017年度は、特に課題Iに関連して、当時、職業的自律性と専門化を進めていた国際法学者と、第一次世界大戦期に中立勢力として存在感を強めていた赤十字国際委員会の協働に着目し、戦時における捕虜の悪待遇や不備を繰り返さないために制定された1929年の捕虜法典についての研究を進めた。また、その成果公表を、国内学会での発表1回、査読付き雑誌でのフランス語論文の掲載によって行った。 課題IIについては、すでに収集して手元にある赤十字国際委員会の中東欧地域に派遣された調査団に関する史料の解析を進めると同時に、2018年2月にパリ及びジュネーヴで新たな史料収集を行った。これまで閲覧してきた史料が赤十字国際委員会を中心とした事務連絡やレポートが主だったため、人道活動に従事した個人の手記をいくつか閲覧できたことがとりわけ収穫だった。成果発表については、国際ワークショップ発表1回、国内学会発表1回、国内研究会発表1回を行い、ワークショップについては現在出版準備が進行中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、すでに手元にある史料の分析、新史料の収集、成果発表をそれぞれ行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題IIについては、継続して赤十字国際委員会の中東欧地域に派遣された調査団に関する史料の解析を進めると同時に、それらに基づく論文の執筆を進めていきたい。 課題Iについては、史料収集のため、本年度はアメリカ合衆国およびヨーロッパ(パリとジュネーヴ)への2回の出張を予定している。9月にアメリカ合衆国スタンフォード大学のフーヴァー研究所でアメリカ赤十字社(レファレンス番号XX482)や、ヨーロッパやロシアへの救援機構(レファレンス・タイトルAmerican Relief Administration)の史料を閲覧し、調査結果を論文としてまとめることを目指す。2019年2月にはジュネーヴおよびパリで、1928年に初の赤十字規約の締結に至る経緯を明らかにするために1920年代の4回の赤十字国際会議の準備・議論・決定の過程についての史料を収集し、成果報告の準備を行う。
|