2017 Fiscal Year Annual Research Report
多様な反応選択性の自在制御に向けた水素結合供与型不斉ルイス酸触媒の開発
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17H07164
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
堤 亮祐 立教大学, 理学部, 助教 (90801697)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 不斉合成 / ルイス酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機合成技術が著しく進歩した現在においても、反応の化学・位置・立体といった様々な選択性を思いのままにコントロールするのはいまだに困難である。本研究は、基質を強力に活性化するルイス酸触媒作用に柔軟な水素結合を組み合わせる「水素結合供与部位を有する配位子設計」により、多様な選択性を自在に制御可能な分子触媒を開発することを目的としている。 触媒系が持つ位置及びエナンチオ選択性の同時制御能を評価するためのモデル反応としてブテノリドの求電子剤に対する求核付加反応を取り上げた。水素結合供与部位を持つ不斉配位子と各種金属塩を組み合わせたルイス酸触媒を用い、α-ケトエステルへのブテノリド付加を試みたが、反応は進行しなかった。そこで上記検討に用いた配位子の構造を改変した有機塩基を新たに合成し、塩基触媒として用いたところ、ブテノリドがα位で優先して付加することを見出した。ブテノリドの直接的触媒的付加反応は、ほとんどの場合γ位で進行することが知られており、通常とは異なる位置選択性を達成することができた。一方得られた付加体はラセミ体かつジアステレオマー比が約1:1であり、立体制御には至っていないことがわかった。ジアステレオマー比に関してはC-C結合形成後に最初にできる生成物が塩基触媒によって異性化する過程で低下することを強く示唆する実験結果が得られている。他の求電子剤を用いた反応も実施したが、α-ケトエステルの場合に比べて位置選択性は低下した。現在立体選択性の獲得に向けて、触媒構造のさらなる改良を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初目的としていた水素結合供与型ルイス酸触媒による多様な選択性制御には至っていないが、新たに合成したキラル塩基触媒を用いることで類例の少ないブテノリドのα位選択的付加反応を見出すことができた。一方で、立体選択性は発現しておらず、母骨格の変更を含めた触媒構造の改良が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
反応の立体選択性が発現しない原因として、触媒構造が比較的柔軟であり基質に対し適切な不斉場を提供できていない可能性が考えられる。そこで1. 剛直な母骨格の利用、2. より強力な水素結合供与部位の導入による求核種、求電子種の同時認識という二つの方針に基づき、最適な触媒構造の探索を行う。また当初予定していた水素結合供与型ルイス酸の開発に向け、柔軟な水素結合供与部位を持つ新たな不斉配位子の開発を行っていく。
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