2017 Fiscal Year Annual Research Report
Genre, Translation, and Gender in the Japanese Classics: with Special Focus on Makura no Soshi and Heian Period Literature
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17H07170
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
常田 槙子 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (20801781)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 平安朝文学 / 翻訳 / ジャンル / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主にフランスとアメリカにおける『枕草子』の翻訳をケース・スタディーとして扱い、国際的受容により変容する日本古典文学の実態を、特にジャンルとジェンダー、翻訳をキーワードに解明することを目指したものである。研究を進めるなかで、レオン・ド・ロニー(Leon de Rosny, 1837-1914)が1871年に上梓した和歌の翻訳・解説書であるAnthologie japonaise : poesies anciennes et modernes des insulaires du Nippon(著者による邦題は『詩歌撰葉』)についても研究する必要が出てきた。同書についてはほとんど研究が進んでいないが、最初期の日本文学のフランス語訳の例として極めて重要だからである。 そこで、2017年3月には、早稲田大学で国際ワークショップ「日本文学のネットワークー重なり合う言説・イメージ・声ー」を主催し、ロニーの『詩歌撰葉』が世界各国の文学と日本の和歌を比較するという手法で、日本文学を紹介していることなどについて報告した。本国際ワークショップではほかに国内外で活躍する若手研究者7名にも登壇してもらい、日本文学を題材にとりながら、本研究課題とも関わる、翻訳、ジャンル意識、ジェンダーの問題も合わせ、多角的な観点から考察してもらうとともに、全体で議論を行った。平安時代文学に限らず、上代から現代まで様々な時代の作品や作家について、上述の問題意識も含めた多様な観点からの議論とその共有ができたことは、本研究のテーマの理解を深める上で重要であったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、欧米を規範としたジャンル分けの実態を批判的に検討することを課題に設定していた。ジャンル分けそのものについて研究成果としては出せなかったものの、研究を進めるなかでレオン・ド・ロニーの『詩歌撰葉』(1871年に刊行された和歌の翻訳書)を取り上げ、『詩歌撰葉』に見られる、ヨーロッパ中心主義から脱した日本文学の紹介方法について分析することができた。欧米規範主義を問題視する研究課題であったが、ロニーの『詩歌撰葉』の分析は、19世紀の海外における日本文学の紹介の実態に新たな側面を見出すことができ、本テーマについての議論を深化させるのに有効であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の研究計画のうち、「翻訳者の役割の検討」、「翻訳のなかで変容してゆくジェンダー表現の分析」、「海外における平安時代女性作家のジェンダー・イメージの形成とその変容の解明」という3つの課題に焦点を絞って研究を進める予定である。また、今回新たに研究対象に加えることになった、レオン・ド・ロニーの『詩歌撰葉』についても、上記の観点を交えながら考察する予定である。
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