2017 Fiscal Year Annual Research Report
The archaeological study of Buddhist temples in silk road using the non-destructive method: Focusing around Ak-Besim site
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17H07175
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
ナワビ アハマッド矢麻 早稲田大学, 會津八一記念博物館, 助手 (60802882)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 仏教寺院 / アク・ベシム遺跡 / 軒丸瓦 / レーダー探査 / 三次元計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
キルギス共和国、アク・ベシム遺跡においては、かつて唐が入植した際に造営されたラバトと呼称される区域に寺院が造営された。この寺院は、1930年代にロシア人考古学者ベルンシュタムによって発見されたが、寺院研究に必要不可欠な伽藍配置や年代は未だに明らかではない。本年度は、寺院を含むラバトと呼称される地域について、レーダー探査の実施とベルンシュタムが発掘した遺物の再整理を計画した。レーダー探査については耕作地の問題等から実施を見合わせたため、年度計画の一部を入れ替え、本年度は遺物の資料調査を実施した。 ベルンシュタムによって1950年に出版された報告書内には、ラバト地域内の寺院より出土した軒丸瓦や仏教関連遺物の図や写真が掲載されているが、モノクロ写真であり文様等の詳細は不明瞭である。アク・ベシム遺跡における仏教寺院の年代比定のためには、中国で製作された瓦との比較が有効であると考えられるため、比較・分析可能なデータを取得する必要があった。ベルンシュタムによって紹介された遺物、特に仏教寺院出土遺物の計測を実施し、その製作技法や文様をアク・ベシム遺跡内の別地点出土の瓦および他地域の瓦と比較することを目的に、調査を実施した。調査の際には、写真撮影、実測、拓本の他に、カメラを用いた三次元モデル構築を行い、平面的な記録を超えて三次元的な比較ができるよう情報を取得した。また遺物一点につき観察表を作成し、客観的データとともに製作技法や微細な調整についても記録した。同時にベルンシュタムの残した文献を再整理し、寺院についての文献収集を行った。遺物の整理の際は、遺構・遺物の複合的な分析が可能なようにデータベース化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ベルンシュタムが発掘した寺院を含むラバト地区について、非破壊的手法であるレーダー探査と測量調査の実施を計画している。前年度実施予定であったレーダー探査については耕作地の問題等から実施を見合わせたため、年度計画の一部を入れ替え対応した。具体的には、2018年度に本格的に実施予定であったベルンシュタム寺院出土遺物の資料調査を2017年3月に行った。キルギス国立歴史博物館において、ベルンシュタムの発掘調査報告書に掲載されている軒丸瓦、石製台座、レリーフ、仏頭片を対象に実測や拓本、写真撮影、SfMによる三次元モデル作成、観察表の作成を実施した。調査に際し、博物館にはベルンシュタムの発掘による遺物の他に、キズラソフらによって発掘された第一仏教寺院・第二仏教寺院・ラバト内の「静寂塔」と呼称される地点からの出土遺物の所蔵も確認された。これらの遺物を含め継続的に調査を行う予定である。 2018年度に実施予定のレーダー探査については、国内で探査による地下マップ作成を進めている宮崎県、西都原古墳群に出張し、主に探査データの解析について、原理と方法の習熟に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、中央アジアの仏教寺院について、GISや衛星画像を用いた分析や、伽藍配置や立地と寺院が有した機能との関係について研究を行ってきた。次年度は、ベルンシュタムが発掘を行った寺院を含むラバト地区において、非破壊的手法である測量・レーダー探査を行う計画である。2017年度はアク・ベシム遺跡でのレーダー探査が耕作地の問題等から未実施のため、2018年の秋に、仏教寺院を含めラバト地区内に探査区を設け、走査を行う。レーダー探査とは、遺跡を非破壊で調査する物理探査の一手法である。地中へ電磁波を放射し、構造物に当たった反射波を解析することで地中の状況を把握するという原理である。地中の含水率の差異に強く反応するため、石や金属、大型の構造物の検出に適した手法であり、国内でも古墳や古代寺院の調査で成果を挙げている。使用するアンテナの中心周波数は500MHz であり、地表下約3m までの状況の把握が可能である。探査成果を正確に測量図に当てはめるために、探査区の外形の測量も合わせて行う。探査により、ベルンシュタム寺院の建造物の壁や床面、伽藍配置や地表面からの深さが明らかになる。伽藍や年代を明らかにし、アク・ベシム遺跡における仏教寺院の様相を復原することが、本研究の最終課題である。 レーダー探査と同時に、博物館における遺物の調査も実施する。前年度の調査を補足する形で、三次元計測が未了の遺物を中心にデータの取得を行う。キルギス国立博物館には継続的な調査に関して許可を得ているため、ベルンシュタム発掘寺院以外の寺院出土の仏教関連遺物についても調査を行う。従来の実測、拓本にくわえ、写真を用いたSfMによる三次元モデルの作成やデジタル三次元計測、写真撮影を実施予定である。成果は前年度のものと合わせ、他地域の遺物との比較分析後報告する予定である。
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Research Products
(1 results)