2017 Fiscal Year Annual Research Report
Research study on public-private replacement of school administration in the turning point of educational governance
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17H07186
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
木村 康彦 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (00802076)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 教育費無償化 / 公私混合型教育費負担構造 / 高等学校等就学支援金 / 奨学金 / 日本学生支援機構 / 私立学校法 / 公共性 / PPPs |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、私立大学の公立化についての調査を進めつつ、教育費負担に関する在り方と私立学校教育の公共性についての研究を行った。その結果、大別して次の2点が明らかとなった。 1点目は、高等学校等就学支援金の制度変化と日本学生支援機構による大学生への奨学金の返還実態などを事例として、現在の私費負担中心の公私混合型教育費負担構造によって、学生生徒等がどのような経済状況に置かれているのかを明らかにするとともに、政府と保護者の教育費負担の適切な分担の在り方を考察した。教育費負担構造に関する従来の先行研究は、政府と保護者の対立構造(教育費の公費負担・私費負担)を前提として論じられているが、本来ならば高卒や大卒程度の人材供給を求める経済界も何らかの形で教育費負担を分担すべきだと述べた。 2点目は、「私立学校法の施行されている国の私立学校制度はどのような特徴がみられるか」「諸外国においては、私立学校の“公共性”をどのように捉えているのか」という2点をリサーチクエスチョンに設定して、比較分析を行った。前者の問いについては、我が国に加えて、中国、韓国、台湾、タイ、オーストリアの6か国の制度概要を整理した。その結果、我が国は諸外国と対比して、ある程度の助成金が政府から交付されてはいるものの、カリキュラムや教科書、教員資格の面なども含めて、教育の公共性・平等性を担保するために、一定の統制をしていることが明らかとなった。後者の問いについては、近年は伝統的な公私立学校に加えて、チャータースクールやフリースクールなどのPublic Private Partnerships(PPPs)の枠組みが活用される事例が多くみられ、私学教育の「公共性」そのものが変化しつつあることが明らかとなった。学校教育をめぐる公私区分の境界線は、より複雑で曖昧なものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果は、年度末時点で研究発表のみにとどまっており、資料収集も一部の地方大学の調査に限定されている点で課題は残ったが、当初の研究計画はおおむね順調に進展しているものと考えている。とりわけ、本年度の研究発表は外国で英語により報告したため、国際的な視座から今後の研究計画を進めるに当たっての示唆を得られたほか、学校教育をめぐる「公」と「私」の特質を多面的に明らかにすることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に収集した研究資料を活用して、今後はデータ分析を進めていく。また、国公私立学校をめぐる行政環境と教育ガバナンスの変化をより正確に捉えるため、私立大学の公立大学法人化や公立国際教育学校等管理事業などの事例について、引き続き調査も継続する。必要に応じて、各地方公共団体や大学などの関係機関に対して、インタビュー調査や情報公開請求などを行うことを考えている。
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