2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H07191
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
矢田部 浩平 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (20801278)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | 音響光学効果 / 位相シフト干渉法 / 位相アンラップ / 物理音響モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
光学干渉計を用いて高速度に測定された光の位相から,時間変化する音響情報を抽出することを目標に,本年度は光学干渉計の干渉縞解析の高性能化,時間変化する位相の情報を抽出する信号処理,時間・空間的な音響情報の表現方法の模索,などの研究に取り組んだ. まず,干渉計によって計測された干渉縞から位相を高精度に抽出する必要があるので,これまで研究代表者が提案してきた手法を更に発展させ,位相シフトされた干渉縞画像のなす部分空間を同定する方法の改良を行った.具体的には,画素単位の信号対雑音比を推定し,その部分空間にとって重要なデータを区別することで,ノイズやオクルージョンにより頑健な位相推定法を実現した.次に,時間変化する成分を抽出するフィルタについて検討し,多くの位相計測で課題となっている位相アンラップ問題を解かずに,直接ラップされた位相を処理する手法を提案した.これにより,測定した光の位相に含まれるバイアスや,位相の不定性に起因するデータの特異性を除去することが容易になり,その後の処理に都合の良い前処理を低演算量で実現することが可能となった.また,時間・空間的な音響情報を物理モデルに基づいて表現する方法についても検討を行い,周波数領域で音響情報が存在する多様体の新たな特徴付けを行った.その結果,データに含まれる情報のうち測定方法に依存した成分を計算することが可能となり,光学的に計測された空気の疎密分布から音に関連する情報のみを抽出する新たな方法を提案できた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
並列位相シフト干渉法を用いて計測する際にこれまで利用していた位相復元手法は,計測領域のオクルージョンに弱いという難点があり,観測領域に物体の存在する状況を計測しづらいという課題があった.そこで,信号対雑音比推定を行ってオクルージョンの発生しているデータ領域を暗部領域と共に自動的に除去する手法を提案し,オクルージョンがある場合にも自動的により高精度に位相を復元することが可能となった.この結果は学術論文誌に論文として掲載されている.また,通常の位相アンラップ問題を回避することで,低演算量で位相の不定性に起因する特異性を除去可能なアルゴリズムを提案し,学術論文誌に投稿して現在査読中である.この手法は,特に音などの高速な物理現象を光学干渉計で計測する場合に有効であり,投稿中の論文では音のみでなく流体の可視化に対しても重要な処理であることを示すことができ,汎用的かつ実用的な処理であることが示唆されている.さらに,周波数領域において音響情報が存在する多様体の新たな特徴付けを行い,学術論文誌に論文として掲載された.これにより,測定された位相に含まれる音情報を明示的に考慮することが可能となり,光学的音響測定手法の発展に貢献できたと考えられる.このように,年度を通じて光学的音響測定に関わる複数の課題に同時に取り組むことで,多角的に研究を進展させることができ,また論文としてそれらの結果を公表することができたので,当初の計画以上に研究を進展されられたと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果により,光学干渉計測による干渉縞画像からの位相復元や,位相情報からバイアスや特異性を取り除いて時間変化する成分を抽出する処理の高性能化が実現された.また,多次元の時系列データに含まれる音響情報を特徴付ける方法についても検討でき,光学的音響測定データから低演算量で音響情報を抽出する方法を実現する準備をすることができた.しかし,これらの研究成果はそれぞれの問題を独立に扱ったものであり,同時に利用することまでは試せていないのが現状である.そこで,まずはそれらの処理を順番に適用し,音響情報の全体的な抽出精度について確認を行う.その上で,これまで測定したデータに適用することで,実データに対する有効性を確認する.また,それらの処理を個別に考えるのではなく,複数の処理を組み合わせて一度に実現する方法についても検討を行い,より簡潔な処理で効率的に音情報を抽出する方法の実現を目指す所存である.
|
Research Products
(40 results)