2017 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロカプセル相変化物質を用いた自励振動ヒートパイプの熱輸送性能向上
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17H07197
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
三浦 正義 神奈川大学, 工学部, 助教 (50803376)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 相変化蓄熱材 / 機能性流体 / 往復振動流 / 熱輸送促進 / 電子機器冷却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,マイクロカプセル相変化物質を作動流体に添加することにより自励振動ヒートパイプの熱輸送性能向上を目指す.本年度は,提案する熱輸送向上手法の有用性を実験的に検討するために,ガラス管を用いた1ターン直線流路自励振動ヒートパイプを設計・製作し,マイクロカプセル相変化物質添加作動流体を用いた自励振動ヒートパイプの熱輸送特性を評価するとともに,ガラス管流路内を自励振動する液柱内におけるマイクロカプセル相変化物質の挙動の観察を行った. 相変化設定温度40℃のマイクロカプセル相変化物質を作動流体であるエタノールに約1wt%添加することにより,同一の作動流体封入体積・加熱部温度・冷却部温度において,マイクロカプセル相変化物質を添加しない場合と比較して,往復振動する作動流体による熱輸送量が約25%増加することがわかった.一方,同一のマイクロカプセル相変化物質を約4wt%添加する場合においては,マイクロカプセル相変化物質を添加しない場合と比較して,熱輸送性能が低下することが確認された.これは,マイクロカプセル相変化物質の潜熱吸収による熱輸送促進は生じているものの,作動流体に対してマイクロカプセル相変化物質の密度が大きく,マイクロカプセル相変化物質添加による液柱質量の増加に伴い液柱振動数が減少したため,液柱-流路壁間の対流熱伝達による顕熱輸送量が低下し,結果として熱輸送性能が低下したと考えられる.以上のように,作動流体にマイクロカプセル相変化物質を添加することの有用性を確認するとともに,自励振動ヒートパイプの熱輸送性能向上において,作動流体に対するマイクロカプセル相変化物質添加濃度には最適値が存在することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って実験装置を設計・製作し,種々のマイクロカプセル相変化物質添加濃度の作動流体に対する自励振動ヒートパイプの熱輸送性能の実験結果を得ることができた.その結果,自励振動ヒートパイプの作動流体にマイクロカプセル相変化物質を添加するという本研究課題で提案する熱輸送促進手法が有用であることを示すとともに,熱輸送促進に対するマイクロカプセル相変化物質の添加濃度の影響や作動流体の種類の影響といった詳細を明らかにすることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度製作したガラス管1ターン直線流路自励振動ヒートパイプを用いた実験において,作動流体に添加したマイクロカプセル相変化物質の濃度を一定に保つことができない場合があった.これは,高熱負荷条件において液柱振動が激しくなると,液柱内で分散していたマイクロカプセル相変化物質が,流路内壁面に形成される液膜を介して流路端部へ押し出され,流路端段差部に滞留したためであった.これは実験装置固有の現象であるため,今後はトップヒート型U字流路自励振動ヒートパイプを設計・製作し実験を行うことで,実験中のマイクロカプセル相変化物質添加濃度を一定に保つことができるようにする.これにより,添加濃度の影響・作動流体の影響をより詳細に検討する.そして,マイクロカプセル相変化物質添加作動流体を用いた自励振動ヒートパイプの熱輸送性能の評価結果,および,振動する液柱におけるマイクロカプセル相変化物質挙動の測定結果に基づき,マイクロカプセル相変化物質添加による熱輸送促進の物理モデルを構築し,自励振動ヒートパイプの熱設計手法の確立を図る.
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