2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H07203
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Research Institution | Shiraume Gakuen University |
Principal Investigator |
宮田 まり子 白梅学園大学, 子ども学部, 講師(移行) (50350343)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 保育環境 / 積み木 / 4歳児 / 相互行為 / 保育方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境要因が協働性の育ちにどのように関係するかを検討することである。本研究では、保育環境において意図的に設定される物的環境の一つである「積み木」に着目している。研究実施者は、3歳児クラスにおける積み木場面において、積み木の特性と積み木場面固有の行為に着目して、探索的に長期的な観察を記録し、それらの結果からより焦点化した観察の記録において微視的な分析を行なっている。結果3歳児が,特に積み木の「崩れ」を刺激として他児の意図を理解したり、他児への働きかけを促進させたりしていることを示唆している。しかしこれらの研究では、意図を理解してから幼児のみで協働して展開していくまでは確認されず、3年保育2年目の4歳児で展開されることが仮定された。以上より、4歳児クラスにおいて、積み上げに対する他者の意図を理解した後,協働して展開するためにそこでの互いが期待する役割をどのように取得したり演じたりしていくのか,その過程と環境要因を究明している。 昨年度は、研究協力園において参与観察を行ない、4歳児積み木場面での相互行為に関するデータを取得した。これまでの結果において、4歳児積み木場面での相互行為におけるイメージの共有では、その内容に柔軟性がみられている。そしてこの結果を受け、さらに積み木素材別の検討を行なっている。結果、イメージ共有における柔軟性は、木製積み木よりもコルク積み木の方が多く発生している可能性がみられ、小型で軽量なコルク積み木の場合は積み上げても容易に位置がずれることから,形状が安定しない性質を持つ物を介しての相互行為であることが一因となっている可能性が示唆された。今年度はより多くのデータを収集し、その可能性を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初第一候補として予定していた研究協力園ではなく、第二候補としていた研究協力園への変更を行なったことで、分析に必要なデータの取得期間に変更が生じ、やや遅れが発生している。ただしこの変更は、申請者と第一候補の研究協力園との間で継続を不可能とする問題が生じたのではなく、本研究の目的において、今年度の両者の状況を見比べ検討した結果、第二候補の研究協力園の方が第一候補であった研究協力園よりより良いデータが収集されると判断されたからである。具体的理由は、①本研究において積み木場面が生成されることは必須なことであるが、第一候補の協力園よりも第二候補の協力園の方が今年度使用予定の積み木の量が多いこと②第二候補園の今年度の保育計画が積み木場面の生成を支援するものとなっていたこと③第二候補の4歳児の学級が安定していて観察者の参与が可能とみなされたことの三点である。よって年度の途中から、第二候補の研究協力園への変更を行なっている。 この変更により、データ取得と分析に遅れが生じている。しかしこれまでにかなりの数のデータは取得できており、最終年度で行なう予定の分析考察と成果発表に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、研究協力園において調査(参与観察)を行なう。積み木場面における4歳児の場面生成の過程から、保育の屋内環境設定に関する課題の検討という新たな検討課題もみえてきている。 よって今年度の分析では、調査で得たデータの分析を精緻に行う。具体的には、①連続的フィールドノーツからの時期的変容の究明②個別観察による園における発達特性の検討に、③保育環境の設定に関する検討を加え、本研究の当初の目的である4歳児の相互行為や協働過程における役割取得についての知見を提示する。 そのために、今年度は積み木を教材とした保育環境の設定においてより実績がある国外の知見を参考にする。具体的には、国際学会での発表、参加と文献の取得であり、予定している。
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