2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H07216
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Research Institution | Hamamatsu Gakuin University |
Principal Investigator |
島埜内 恵 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 講師 (30805263)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 移民教育政策 / ELCO / 出身言語・文化教育 / フランス / 母語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で分析の対象としている、「出身言語・文化教育(以下、ELCO)」プログラムについて、本年度は以下の2点に取り組んだ。 第一に、ELCOプログラムに関する新たな方針が示された2016年度以降の公文書等の入手・分析を行った。ELCOプログラムについては、「出身言語・文化教育」から「外国語の国際教育(EILE)」への改称をともなった改革方針が示されており、その具体的内容を整理した。この改称は1973年の施策導入以降初めてのことであり、「出身」という移民を想起する単語の使用を廃止し、「外国語」、「国際教育」という、よりニュートラルな表現を採用したといえる。しかしながら、この改称とともに示された改革の内容については目新しいものはなく、これまで示されてきた改善の必要性や改革方針がより強く主張されるにとどまっているといえる。 第二に、この改革方針を踏まえ、ヒアリング調査を実施した。対象としたのは、イタリアとポルトガルのELCOプログラムを管轄する、ポルトガル大使館、イタリア総領事館の教育担当行政官と、イタリアのELCO教員である。調査においては、改革の方向性への評価や改革前後での実態における具体的な変化を中心に聞き取りを行った。この改革の大きな変化のひとつとして、受講者の増加が両国担当者から示され、またそれが好意的に受け止められていることが窺えた。 今後必要なのは、上記2カ国以外のELCOプログラム関係者(行政官だけではなく学校長や教員等を含む)、および受講者側(受講する子どもとその保護者)へのヒアリング調査である。これらの人びとが今回のELCOプログラムの改革をどのように評価しているのか等を分析することを通して、二国間協定を基盤としたいわゆる移民出身国と移民受入国の両者が連携した教育施策の在り方や可能性を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関係資料の入手とヒアリング調査はおおむね順調に進んでいるといえる。 今後、後者についてはその対象を拡大する必要がある。拡大の方向性は、①ELCOプログラムの対象国である9カ国の教育担当行政官、②学校現場レベルでの、すなわちELCOプログラムを開講している学校の学校長やELCOプログラム担当教員、そして③ELCOプログラムの受講者側、すなわちELCOプログラムを受講する子どもやその保護者、である。
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Strategy for Future Research Activity |
ELCOプログラムの受講者側(子どもと保護者)に調査協力を得るため、ELCOプログラムの対象である9カ国の言語教育を行っている社会団体へとアプローチする予定である。そこでは、各国の言語を教える教員や保護者等が、言語の維持やホスト国であるフランスでの各国のネットワークを保持する、あるいは拡大すること等を目的として活動しており、その団体を介して子どもや保護者の紹介を打診する予定である。
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