2017 Fiscal Year Annual Research Report
Civil Liability for Defects in Construction Contracts : A Comparative Study of Japanese and German Law
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17H07230
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
永岩 慧子 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (90805582)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 建築瑕疵 / 請負契約 / 契約不適合責任 / 瑕疵責任 / ドイツ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の民法は、2017年5月に起草以来となる大規模な改正が成立したところであり、請負の瑕疵をめぐる規定は、大部分が売買の包括準用とされ、解釈論による請負の性質の考慮が急務となった。とりわけ、今回の改正は、これまで多数の裁判例が採ってきた「仕事の完成」による債務不履行責任と瑕疵担保責任の境界づけに大きな影響を与える。 この点、ドイツでは、2002年の債務法現代化において、瑕疵担保責任を一般給付障害法における義務違反の一類型とした一方で、請負の瑕疵責任における特則性を残したことにより、債務不履行の一般規定と瑕疵責任規定との適用がどのように境界づけられるのか、激しい議論がなされている。そこで、本年度は、わが国の改正法と類似の状況において議論の蓄積がみられるドイツ法について、学説及び裁判例を収集し、それらの整理・分析に取り組んだ。この成果は、2018年3月に広島大学で行われた民事法研究会にて報告した。そこで得られた指摘等について、2018年6月に行われる比較法学会における報告に向けて検討を進めた。 また、ドイツでは、建築契約に関する規定を民法典上に採り入れるという大規模な改正が2017年に行われた。そこで、改正法の立法理由書及び議事録等から、改正の目的を明らかにし、これまでの改正過程の検討を行った。この成果は、「ドイツにおける建築契約法の改正」としてNBLに投稿した(1122号(2018年5月15日号)39頁以下に掲載)。さらに、改正法の条文試訳を行い、各規定について検討した。この成果は、「建築契約に関するドイツ民法典改正について-改正法の概要と試訳-」(名経法学39号(2017年)92頁以下)として公表した。今後は、わが国とドイツにおける相違点を正確に把握したうえで、わが国の改正法において検討すべき問題点を析出し、それらについてのあるべき解釈論の提示に向けて研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画に従って、おおむね予定通り研究を進めているが、研究環境の変化等を理由として、ドイツの文献収集にやや時間を要した。現在は、ドイツ語文献の収集を問題なく行うことができる環境が整っているため、収集した資料の翻訳・分析作業を引き続き進めていく。 また、ドイツにおける建築契約をめぐる改正法の試訳及び各条文の紹介に関する論文の執筆に当初の予定より時間を要し、瑕疵責任に関する議論状況の検討を論文としてまとめ、公表する作業にやや遅れが生じている。これらについては、公表に向けた作業を急ぐ。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に続き、同様の視点において、平成30年度研究実施計画に沿って研究を進める。平成29年度に行ったドイツにおける議論の研究成果については、早急に論文にまとめ、公表する。なお、ドイツにおける2017年の改正により、ドイツの注釈書等の改訂が行われているため、これらの確認・分析作業に当初の研究計画より時間を割く必要がある。
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