2017 Fiscal Year Annual Research Report
「誰が話しているか?」を認識するための脳内機構:ヒトおよびニホンザルを用いた研究
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17H07234
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
古山 貴文 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (20802268)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 音声 / EEG / ニホンザル / 比較認知神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、霊長類が音声のみで発声個体を識別(音声個体識別)するために必要とする脳内機構を解明することである。 本年度は、音声のみで発声個体を識別するために必要な脳部位を特定するために、皮膚表面に複数電極を配置し、脳波を計測するElectroencephalogram(EEG)計測法を用いてニホンザルの脳活動を計測した。被験体として、1匹のオスのニホンザルを使用した。音声刺激として、被験体以外のサル2個体(サルA,B)の音声を使用した。ヒトのEEG研究で適用されている国際10-20法に基づいて、ニホンザルの皮膚表面に15点の銀製皿電極を配置した。サルBの音声を8ー12回提示した後に、サルAの音声を提示し、脳波の変化を記録した。 その結果、サルAとサルBの音声において、刺激の違いに対して観測される脳活動(Mismatch negativity: MMN)を観測することに成功した。さらに、前頭葉部分でMMNの最大値が観測された。これは、ヒトのMMNの最大値が観測される部分と一致していた。そのため、MMNの発生源はヒトとニホンザルにおいて同様である可能性を示唆した。また、左側と右側のMMNの量を比較した結果、右側よりも左側の振幅が大きかった。ヒトの音声処理は、左脳優位と言われている。本実験の結果から、ニホンザルも同種の音声を処理する際には、左脳優位で行っている可能性を示唆した。このことより、ニホンザルの音声処理機構は、ヒトと同様であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の所属している研究室では、主に行動実験を行っていた。所属研究室で初めて麻酔下のサルから脳波を計測に成功した。さらにヒトなどで良く使用されているEEGの国際10―20法をサルに適用し、刺激の違いに対して観測される脳活動(MMN)を計測することに成功した。その結果、ヒトの脳活動との比較が可能になったため、本年度の研究計画はおおむね進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、申請者はEEG法を他の被験体にも適用し、昨年度観測された脳波の違い(MMN)が他の個体においても観測されるかを確認する。さらに記録電極数を増加させ、MMNが生じる発生源を推定する。 また音声種類の中には、個体識別困難な音声種類も存在すると考えられる。現在使用している音声と、他の種類の音声との比較を行うことで、どの音声種類を個体識別に使用しているかを判断していく。
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