2017 Fiscal Year Annual Research Report
パイン産業の変遷にみる歴史と文化の再構成―沖縄、台湾、フィリピンを中心に
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17H07239
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
安里 陽子 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (30802582)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | パイン / 米軍占領下沖縄 / 移民 / 華人 / 台湾 / ハワイ / フィリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、帝国の植民地で発展したパインアップル産業に着目し、環太平洋を横断的に研究することで一国史では見通すことができない産業に携わる人やモノ、資本の移動を分析し、境界において人びとが経験をどのように再構成しながら生きてきたのか明らかにすることである。具体的には沖縄、台湾、フィリピンをはじめ東南アジアにおけるパイン産業に関わる人やモノ、資本の移動をたどり、人びとの経験やパインにまつわる表象の変化にはどのようなポリティクスが働いているのか明らかにする。初年度の2017年度は文献史料収集を中心に調査をおこなった。具体的な研究実績の概要は以下の通りである。 1.フィリピンにおけるパイン産業の変遷・・・フィリピンのパイン産業にまつわる状況についての文献史料を収集した。フィリピンにおいてパイン産業が大きく発展したのはアメリカの植民地となって以降であり、そこにはハワイのパイン産業の動向が大きくかかわっていた。また同時にハワイのパイン産業には早い段階から多くのフィリピン人移民が従事していたことが明らかとなった。さらに、それよりはるか以前のスペイン植民地時代においてもフィリピンではすでにパインにまつわる異なる形態の産業化が進んでおり、そこには華人が大きくかかわっていたことが明らかになった。 2.台湾におけるパイン産業の変遷・・・戦前期のパイン産業がどのように台湾で発展し、沖縄へ導入されることとなったのかその経緯を文献史料を複合的に分析することにより明らかにした。また、1960年代に沖縄へ技術導入の一環として派遣された労働者について、その概要と統計資料、沖縄自体の位置づけなど、どのように台湾の僑務委員会側が把握しているのかについて文献史料から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は実質半年間であったが、予定していた各地で調査を実施することができた。ハワイでは史料の蓄積が膨大であったためさらなる調査の時間が必要であるが、次年度以降の追加調査で重点的におこなうことによって遂行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査で収集した文献史料の分析を進めるとともに、2018年度はとくにハワイにおける文献史料の収集を、ハワイ大学ハミルトン・ライブラリーを中心におこなう。また、ハワイのほか沖縄県公文書館、沖縄県立図書館など各地で文献史料の追加調査を実施するほか、1960年代に沖縄でパイン産業にかかわっていた方への聞き取り調査も沖縄・石垣島で実施する。 2018年度は、国際学会での報告に加え、分析結果を論文にまとめ、投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)