2017 Fiscal Year Annual Research Report
超解像位相アンラップ法の高精度化および高速化に関する研究
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17H07243
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北原 大地 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (20802094)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 代数的位相アンラップ / 多項式剰余 / 凸最適化 / 部分終結式 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,東京工業大学から立命館大学に所属が変わり,位相アンラップの応用先として挙げられるMRI信号およびCT信号に関する研究を行うことができた. MRI分野では,撮像時間を短縮する圧縮センシングMRIという技術に対して,従来の凸最適化問題に現れる「観測データとの整合性項」と「辞書と呼ばれる基底(またはフレーム)との整合性項」の2つをレベル集合制約とした問題を提案した.数値実験により,提案法が,同一のパラメータ設定でも異なる対象画像をロバストに再構成できることを示した.また,提案する凸最適化問題の解法として,交互方向乗数法(ADMM)を用いることで,再構成時間の短縮にも成功した. CT分野では,X線被曝量を低減するために,少ないX線投影回数から良好な画像を再構成する手法を提案した.提案法では,辞書学習を利用する従来法における,辞書と正則化パラメータをマルチクラスへと拡張することで,アーチファクトが大幅に抑制された良好な再構成結果を生成することに成功した. また,複素平面における単位円周上の位相アンラップ問題に対しては,「代数的位相アンラップの適用条件の緩和と数値的不安定性の解消」のため,連続位相計算に必要な「スツルム列」を生成する「多項式除算型演算」を新たに構築した.さらにスツルム列に現れる関数が新たに開発した「自己反転型部分終結式」と呼ぶ行列式を用いて表現できることを示し,数値的不安定性の原因となっていた「再帰的多項式除算」の回避に成功した.この研究成果は,サンプリング理論に関するトップレベルの国際会議(SampTA)にも採択され,今後の進展が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
MRI信号とCT信号に関する研究は,どちらも劣決定な画像再構成問題であり,位相アンラップ問題そのものではない.しかしながら,どちらの信号にも,「パッチと呼ばれる小領域に分割すれば辞書と呼ばれる適切な基底を用いてスパースに表現できる」という性質があり,この性質は位相アンラップの際にも利用可能であると考えている. 代数的位相アンラップに関しては,複素平面における単位円周上の位相アンラップ問題に対して,新たに開発した「多項式除算型演算」と「自己反転型部分終結式」を用いることで,数値的不安定性を解消できることを示した.この構造は,実軸上の代数的位相アンラップに対して,「ユークリッドの互除法」と「通常の部分終結式」を用いることで数値的不安定性を解消したときと全く同じになる.したがって,この研究成果は,今まで不明であった単位円周上の多項式に関する代数的構造を解明する足掛かりになると考えられ,今後のさらなる理論的展開が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,実データを用いて数値実験を行う.まず,計算時間は考慮せずに,合成開口レーダとMRIの信号に対して,提案している超解像位相アンラップが上手く適用できるか検証する.次に超解像位相アンラップ法の高速化に取り組む.超解像位相アンラップ法では, ベクトル場と位相曲面のどちらも計算に多くの時間を要するため,それぞれの計算を高速化させる必要がある.ベクトル場に関しては,「領域分割とガウス=ザイデル反復法」を組み合わせた手法を適用し, 位相曲面に関しては,代数的位相アンラップ法の 「部分終結式」を用いた高速な厳密計算手法を適用する.
また,単位円周上の多項式に関する代数的構造を解明し,学術論文に一早く投稿する予定である.その他,11月に開催される信号処理に関する国際会議「Asia-Pacific Signal and Information Processing Association Annual Summit and Conference 2018」において,東京工業大学の山田功教授とともに位相に関するSpecial Sessionを行う予定である.
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