2017 Fiscal Year Annual Research Report
日本企業のコーポレート・ガバナンスとリスクテイキング
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17H07273
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
齋藤 巡友 桃山学院大学, 経営学部, 講師 (80803585)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / リスクテイキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本企業のガバナンスおよび近年のコーポレート・ガバナンス改革の有効性を検証することを目的とし、コーポレート・ガバナンスに関連する種々の要素が企業のリスクテイキングに与える影響について実証分析を行っている。 平成29年度の研究では、コーポレート・ガバナンスを特徴づける重要な要素の一つである株主による経営者の規律付けのメカニズムに焦点を当てた分析を行った。具体的には、株主構成や取締役会構成と企業のリスクテイキングとの関係性を明らかにする分析を行った。 まず、株主構成に関しては株式持合比率や大株主の集中度といった変数を用いて分析を行った結果、株式持合比率が高い傾向にある企業、すなわちガバナンスが有効に機能しておらず経営者のエントレンチメントが強いと想定される企業ほどリスクをとっていない傾向にあることが分かった。また、取締役会構成に関しては社外取締役比率や独立取締役比率といった変数を用いて分析を行った結果、取締役会において社外取締役や独立取締役が多い企業、すなわち経営者の監視機能が強いと考えられる企業ほどリスクをとる傾向にあることが分かった。いずれの分析においても、企業のリスクテイキングの代理変数には株式リターンの標準偏差や総資産利益率の標準偏差といった多くの先行研究で使用されている一般的なものを用いている。 以上の結果は、株主による経営者の規律付けが強いほど日本企業はリスクをとっている可能性を示唆するものであり、近年のコーポレート・ガバナンス改革に対して評価を下すための重要なエビデンスとなりえる。 ただし、現在の分析結果はデータ収集の関係上、限定的なサンプルに基づいた分析結果であるため、今後更にデータを拡充することにより上記の結果の妥当性や頑健性についての検証を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実証分析において使用する変数の作成に必要な各種データ(特に直近の取締役会関連のデータ)の収集に想定以上の時間を要したため、分析に着手するのに遅れが生じた。 大規模なサンプルを利用した分析の実行およびその分析から得られた結果を解釈し、研究発表を行う予定であったが、上記の理由により現状は基本的な分析を実行した段階にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究については、直近の取締役会関連のデータの収集が完了し次第追加の分析を行い結果の妥当性および頑健性を確認し、論文にまとめた後随時研究発表を行っていく。 また、平成30年度の研究については当初の実施計画の通り、株主構成や取締役会構成といった株主による経営者の規律付けのメカニズムとは異なる側面からコーポレート・ガバナンスとリスクテイキングの関係性を検証していく。具体的には、従業員や顧客といった株主以外の企業のステークホルダーによるガバナンスのメカニズムに焦点を当てた研究を行う。この研究においてもデータ収集等に一定の期間を要することが予想されるため、平成29年度の研究において問題が生じた点を十分に考慮したうえで研究を遂行していく。
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