2017 Fiscal Year Annual Research Report
CLILを活用した小中学校の学びを繋ぐモデルカリキュラムの構築
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17H07274
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Research Institution | Osaka Seikei University |
Principal Investigator |
伊藤 由紀子 大阪成蹊大学, マネジメント学部, 講師 (20804826)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | CLIL / カリキュラムの構築 / 異文化理解 / 英語教育法 / 小中学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者は,長年の中学校英語教員としての経験から,英語学習への動機づけの大切さ,異文化理解の重要性を感じ,これまで,英語のスキルを向上させるためだけの授業ではなく,英語学習の向こう側にある異文化を学ぶことを目的とした研究に取り組んできた。それらの研究から,英語と異文化を繋いだ指導を通して, 生徒が外国の文化および日本の文化についての理解を深めることの意義と,それを教える教員がグローバルな視点を有していることの重要性を感じている。英語はコミュニケーションのツールであり,外国人と接する中で,英語で会話するだけでなく,日本文化を英語で発信できる力も同時に求められている。本研究では,教科を超えた指導や,実際の場面での英語使用,異文化の指導を充実させるという課題において,英語を使って他教科を指導する教科連携の指導法であるCLIL(内容言語統合型学習)に着目する。CLILとは,学習と教授において,第二言語と学習内容の両方に焦点が当てられた指導法である。 本研究では,以下の二つの目的で,英語と他教科を同時に扱うCLILを活用した小中学校の学びを繋ぐモデルカリキュラムの構築をめざす。 1. CLILに基づいた指導を提案し,モデルカリキュラムを構築する。現場の教員がCLIL授業を活用するにあたり,参考にできるようなCLIL指導案集・教材集を作成する。 2. 1の成果をまとめ,近年注目されているCLILをより効果的に広めるため,小中学校の教員を対象に,自らの授業を振り返りながら「往還型」で進め,CLILの指導法に関する教員養成プログラムモデルを構築する。本研究の最終目的は,英語を通して異文化および自国の文化についての理解を深めることのできる生徒を育成できる指導者養成をめざすことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究において,実践校との打ち合わせがスムーズに進んだこともあり,構築したモデルカリキュラムを使っての,小学校・中学校でのCLILの教員研修および授業実践である,英語で「伝統工芸・奈良うちわ」を作成する授業,名画を鑑賞し,和紙ちぎり絵で表現する授業,体育のバスケットボールの授業の3つの授業が既に終了している。バスケットボールのCLIL授業に関しては,当初の計画にはなかったが,CLIL指導に興味を持った若手教員が挑戦することとなった。また,ハワイの視察を2年目に予定しているが,1年目に行われたHawaii International Conference on Educationに採択されたため,学会発表を行うことができた。2年目に当たる本年度の計画であるが,1年目に実践が終了している小学校・中学校の実践のデータを整理して,分析とまとめを行う。その効果の検証をしていくことで,教員養成研修プログラムのモデルを提唱していく。小学校教員や英語科以外の中学校教員にとって,英語で授業をすることは容易ではないが,特に若手の教員には,CLILを取り入れた授業の実践を通して,自分なりに工夫した授業を組み立てていけるよう支援する。 また,小・中学校以外に,社会教育としてのCLIL指導の広がりを目的に,学童保育において「英語でものづくり」というテーマで実践を行う予定である。実践の前後には,教員と綿密な打ち合わせ,振り返りを行う。 研究成果のまとめとして,CLIL教材集を作成する。内容は,小学校・中学校ごとに指導案をまとめ,実際の授業の様子を紹介するもので,ALTとのティームティーチングに対応できるよう英語に翻訳し,教員に広く提案する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,現在までのところ,順調に進んでおり,当初の計画以上に進展している。今後は,研究をさらに進め,CLIL指導の事例を増やし,小・中学校教員に広く提案していく予定である。本研究において,海外では日々CLIL研究が進んでいることや,CLILは決まったひとつのスタイルのみというわけではないため,様々なスタイルの授業見学や授業実践者へのインタビュー,研究会などで,新しい情報を得ることが非常に大切だと考えている。 本研究では,文献を整理して実践,まとめ,成果発表という流れだけではなく,研究を何度も振り返り,新しい情報を得るために研究会に参加したり,新しい論文に触れたりしながら,筆者自身が学び続ける必要があると考えている。 近年,オリンピックに向けて,外国語教育への関心が高まっていること,また,小学校で英語が教科化されることなど,英語教育に関するニュースが絶えないが,多くの人がどのように英語を教えたら効果があるのか模索している中,昨年2017年度に,「日本CLIL教育学会」が発足した。英語で他教科を指導するCLILは非常に関心が高く,毎月,学会や研究会,勉強会を開催している。まだ過渡期ではあるが,CLILの研究会では,多くの事例報告やワークショップが行われている。今後も学会運営に関わり,CLILを実践し,広めていきたいと考えている。
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