2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on evolution of sex chromosome and sex determination system in Hokou gecko
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17H07279
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
松原 和純 関西学院大学, 理工学部, 助教 (90399113)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 性染色体 / 爬虫類 / ヤモリ / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
3種の日本産ヤモリ、ニホンヤモリ、ミナミヤモリ、オキナワヤモリは近縁種でありながら異なる性決定様式をもち、ニホンヤモリとオキナワヤモリは温度依存性決定を、ミナミヤモリは雌ヘテロ型(ZZ/ZW型)の性染色体をもつ。この事からミナミヤモリの系統において比較的最近にZW型のGSDへの変遷が起きたと予想される。ミナミヤモリにおける性染色体の進化過程を解明することを目的として、性染色体連鎖遺伝子のZとWホモログの配列を比較した。先行研究においてミナミヤモリの性染色体に6つの遺伝子、ACO1、RSP6、DMRT1、CHD1、GHR、ATP5A1が同定されている。そのうちACO1、RSP6、DMRT1はZとW染色体間で逆位が生じた領域に位置する。この3遺伝子についてイントロンを挟むように複数のプライマーペアを設計し、雄2個体、雌4個体のゲノムDNAに対してPCRを行った。その結果、ACO1の第7イントロンにZとWホモログ間で差異が同定され、ZとWホモログ間で分化が生じている事が明らかとなった。ZとWホモログ間で第7イントロンの配列を比較した結果、89.1%の相同性が見られた。また、ニホンヤモリの相同配列とも比較したところ、Wホモログの配列の方が祖先配列に類似していることが推定された。一方、RSP6についてはZとWホモログ間で多型は検出されなかった。また、DMRT1のZとWホモログ間においてはイントロンの塩基配列に多型は同定されなかったが、第3エクソンに一つの塩基置換が同定された。通常、塩基配列の進化はエクソンよりもイントロン領域の方で速く進む。従って、DMRT1のZとWホモログ間では分化が生じているが、その塩基配列や遺伝子構造の差異は小さいと予想された。ACO1はW染色体短腕の末端領域に位置し、その領域以外ではZとW染色体間の塩基配列の分化はあまり進んでいないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画には、マイクロディセクションを用いたZとW染色体の単離および次世代シーケンサーによる性染色体DNAの解析も含めていた。実際に雄2個体、雌3個体の細胞を培養し、マイクロディセクションに用いる染色体標本を作製した。しかし、マイクロマニピュレーターの移管などの事情によりマイクロディセクション実験を開始する時期が当初の予定より遅れたため、次世代シーケンス解析に至っていない。現在、次世代シーケンス解析用のライブラリー調製を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. H29年度の研究成果においてDMRT1のZとWホモログ間で生じた塩基置換を同定した。H30年度はDMRT1のZとWホモログの全長配列の決定を行う。雌のゲノムライブラリーを構築し、プラークハイブリダイゼーションによってZとWホモログを含むゲノム断片を単離し、上流と下流領域も含めたZとWホモログの全長塩基配列を決定する。 2. マイクロディセクションによりZとW染色体を単離し、DNA増幅キットを用いて染色体DNAを増幅する。その後、染色体ペインティングによって単離した染色体がZもしくはW染色体であることを確認し、染色体DNAを次世代シーケンサーによって解析する。 3. 次世代シーケンスで得られたデータを解析し、ZとW染色体上に存在する遺伝子を同定する。ZとW染色体間で含有する遺伝子や塩基配列を詳細に比較し、片方の染色体にのみ存在する遺伝子やホモログ間で塩基配列が著しく分化している遺伝子を選抜する。また、それらの遺伝子のモデル動物での機能情報を基に性決定候補遺伝子を選抜する。 4. 胚の生殖腺の組織切片を作製し、形態的な分化の始まる時期を特定する。さらに、脊椎動物において性分化初期の生殖腺で発現することが判明している遺伝子について半定量的PCRで発現解析し、性分化時期を特定する。続いて、性分化時期の胚から性腺を摘出し、RNA-seqを行う。雌雄間で転写産物の網羅的比較を行い、発現量の差が見られる遺伝子を特定する。 5. 性分化時期の雌雄の胚や生殖腺をサンプリングし、選抜された遺伝子やDMRT1の発現解析を行う。また、DMRT1については、培養細胞におけるレポーターアッセイによってZとWホモログ間におけるシス発現調整領域の機能の差異も検証する。それらの結果に基づき、性決定候補遺伝子を特定する。
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