2017 Fiscal Year Annual Research Report
福祉供給主体をめぐる利用者主権の再検討―コ・プロダクションの事例を中心に
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17H07295
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
小田巻 友子 松山大学, 経済学部, 講師 (20806442)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | スウェーデン / コ・プロダクション / 障害福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サービス生産過程に利用者が関与するコ・プロダクションの様態を、日本とスウェーデンの事例から検討する。本研究の目的は、第1に、サービス生産過程において利用者・家族・専門家がどのように合意形成を図っているのか、第2に、そのことが供給されるサービスの質や量にどのような影響を与えているかを明らかにすることである。 平成29年度の国内調査では、本研究で日本の障害福祉分野のコ・プロダクション事例と位置付ける共同作業所を対象に、サービス生産過程において利用者・家族・専門家がどのように合意形成を図っているのかを焦点として、施設責任者へのインタビュー調査を実施した。また、日本の医療・介護分野におけるコ・プロダクションの典型事例である医療福祉生活協同組合への訪問調査を実施し、共同作業所との比較から、サービスの意思決定過程における利用者の関与のあり方を考察した。 平成29年度の国外調査では、スウェーデンの精神障害者の支援に特化したサービスであるPersonling Ombud(以下、POと記す)をスウェーデンの障害福祉分野のコ・プロダクション事例と位置付け、各基礎自治体の担当POを対象に、サービス供給のしくみについてインタビュー調査を実施した。そこでは、各基礎自治体の現場レベルでの支援実態に基づき、「どのように専門家と利用者の共同決定を実現しているか」を明らかにした。また、スウェーデンの保育分野におけるコ・プロダクションの典型事例である協同組合型就学前学校にて、同様のインタビュー調査を実施し、POとの比較から、サービスの意思決定過程における利用者の関与のあり方を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は計画に従い国内・国外でのインタビュー調査を実施した。現在これらの成果をもとにした学会報告、論文投稿の準備段階にあり、研究成果報告の観点からは、進捗がやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の国内調査では、前年度に引き続き、複数の共同作業所へのインタビュー調査を実施する。とりわけ該当施設が少ないと考えられる「障害者の親が職員の役割を担い、職員がいない事業体」「障害者自身が運営し、職員がいない事業体」への調査を集中的に行う。ここでは、国の統計資料に表れない共同作業所の実態を把握し、コ・プロダクションの多様性を観察する。 平成30年度の国外調査では、前年度に実施できなかった社会庁のPO責任者を対象としたインタビューを実施し、POのスウェーデンでの法制度上の位置づけに関して聴き取りをするとともに、資料提供依頼を行う。また、必要に応じてスウェーデンの各基礎自治体の担当POを対象としたインタビュー調査を追加実施する。 これらの調査結果を基に、コ・プロダクションの典型事例とされる日本の医療福祉生活協同組合やスウェーデンの協同組合型就学前学校との比較から、本研究で新たにコ・プロダクションの事例として紹介する日本の共同作業所、スウェーデンのPOの位置付けを相対的に明らかにし、利用者主権を担保した福祉サービス供給の在り方を提示する。研究成果は申請者の所属する学会で報告・論文投稿の形で随時公表していく予定である。
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