2017 Fiscal Year Annual Research Report
脳梗塞進行度を反映したPentraxin3 のt-PA適応マーカーとしての確立
Project/Area Number |
17H07300
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
中野 貴文 福岡大学, 薬学部, 助教 (40804539)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / PTX3 / t-PA |
Outline of Annual Research Achievements |
血栓溶解薬の組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)は脳梗塞に対し、劇的な治療効果を示す。しかし、脳梗塞の病態が進行した状態で、t-PAを投与すると脳出血が生じるリスクが高くなる。そのため、t-PAが投与できるのは脳梗塞発症後4.5時間以内と限定されているが、発症時刻の聴取は困難な場合が多く、t-PA適応の判断が難しいことが課題となっている。そのため。t-PA 投与を支持するバイオマーカーを発見することができれば, t-PA適応患者の増加が期待される。申請者は脳梗塞モデルマウスを用いて、血管炎症マーカーであるPentraxin3 (PTX3) が脳梗塞の進行に伴い上昇することを見出した。このことから、PTX3は脳梗塞の進行度や重症度を反映し、t-PAの適応を判断するバイオマーカーになると着想した。本研究は脳梗塞後のPTX3の動態と病態生理機能を解明し、t-PA適応マーカーとして有用であることを基礎研究、臨床研究の両面から明らかにすることを目的としている。我々は脳梗塞モデルマウスにおいて、t-PAを投与すると脳出血が生じる脳梗塞発症後4時間目に、血漿中PTX3濃度が上昇していることを明らかにした。また、t-PAを投与しても脳出血が生じない脳梗塞発症後2時間目では、血漿中PTX3濃度の上昇はみられなかった。これらの結果から、血漿中PTX3濃度の上昇とt-PA投与の制限時間には関連性がある可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度、脳梗塞モデルマウスにおいて、血漿中PTX3濃度の上昇とt-PA投与の制限時間に関連性があることを明らかにした。これについては、共同研究先の米国マサチューセッツ総合病院脳神経グループの専門家の方々と今後の方向性等について意見交換を行うことができた。更に、前年度は脳梗塞モデルマウスに対し、PTX3タンパクもしくはPTX3抗体を投与することで、PTX3は脳梗塞の進行度を反映するマーカーだけではなく、治療ターゲットとしても重要であるか解明する予定ではあったが、本年度に検討を行う。 脳梗塞患者の検体を用いて、PTX3の脳梗塞バイオマーカーとしての有用性を検討するための、臨床検体数は順調に確保できている。
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Strategy for Future Research Activity |
脳梗塞モデルマウスに対し、PTX3タンパクもしくはPTX3抗体を投与することで、PTX3は脳梗塞の進行度を反映するマーカーだけではなく、治療ターゲットとしても重要であるか解明する。また、脳梗塞患者の検体や診療録を用いて、PTX3は脳梗塞の病態を反映するバイオマーカーとして有用であるか、PTX3はCRPなどの他の炎症マーカーと比較して有効であるか、血漿中PTX3濃度は脳梗塞後に併発する疾患に左右されるかなどを検討していく予定である。
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