2017 Fiscal Year Annual Research Report
脳血管性認知症の睡眠障害による神経-アストロサイト連関機構への影響
Project/Area Number |
17H07301
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
長尾 昌紀 福岡大学, 公私立大学の部局等, ポスト・ドクター (70806372)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 睡眠障害 / 脳血管性認知症 / アストロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脳血管性認知症(VaD)に併発する睡眠障害を適切に治療することで認知機能障害の亢進を抑制するか、またこの作用機序に神経新生などのアストロサイト是正機能が関与し得るか検討する事を目的としている。本年度は①VaDモデルラットの空間記憶障害に対する睡眠促進薬の改善効果、②アストロサイト阻害剤による空間記憶障害改善への抑制効果を検討項目とした。VaDモデルラットは10分間の全脳虚血を2回行って作製した。脳虚血後7日目に8方向放射状迷路を用いて空間記憶の評価を行った結果、顕著な空間記憶障害を示した。これに対してセロトニン5-HT 2a/2c受容体作用薬であるtrazodoneを脳虚血後7日間の経口投与を行ったところ、抑制傾向は認められたものの、顕著な改善効果を示さなかった。また本VaDモデルラットの睡眠障害に対するtrazodoneの効果を簡易的に検討するために、赤外線センサーを用いた24時間の自発運動量測定を行った。その結果VaDモデルラットは顕著な自発運動量の増加を示した事に対して、trazodoneの投与により改善傾向を示した。このことからtrazodoneの投与はVaDモデルラットの睡眠障害を改善するが、空間記憶障害を改善しないことが示唆された。しかしながら、今回空間記憶の評価は施行1時間前に薬物投与を行ったため、睡眠薬による催眠作用により適切な空間記憶機能の評価が行えなかった可能性がある。従って、今後の検討では7日間投与後翌日に空間記憶の評価を行う事とする。また非ベンゾジアゼピン系やメラトニンMT1/2受容体作用薬の評価は十分な動物例数が少なく検討中である。同様に②のVaDモデルラットの空間記憶障害に有効な睡眠薬に対するアストロサイト阻害剤の抑制検討については、①の結果から有効な睡眠薬の検出されていないため未検討である。早急に実験計画を立て直して遂行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
①記憶獲得動物数の不足 空間記憶の評価には8方向放射状迷路を用いているため、記憶獲得トレーニングを行い、記憶獲得した個体にVaDモデルの手術を施している。しかしながら、記憶獲得には最低2カ月の期間を要し、使用動物の例数の獲得が限られるため、今回の報告までに十分な実験例数が得られなかった。 ②睡眠薬の入手困難 当初予定していた睡眠薬であるオレキシン拮抗薬(suvorexant)の試薬入手が特許の関係のため、購入が不可能であった。そのため現段階でオレキシン拮抗薬を用いた検討を行うことが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
①記憶獲得動物数の不足 記憶獲得動物の例数を増やすためトレーニング個体数を増やす。また一定期間獲得をしなかった個体は組織染色学的検討に使用し、実験の効率化を図る。これによる実験効率の改善がみられない場合は、より短期間で検討可能であるモリスの水迷路課題での検討を試みる。
②睡眠薬の入手困難 他の入手可能なオレキシン拮抗薬にalmorexantやTCS-1102があり、これらを検討予定とする。なお、これらの試薬は非常に高価な試薬であるため、経口投与ではなく脳室内投与により検討する。
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