2017 Fiscal Year Annual Research Report
新しい消散構造をもつ非線形偏微分方程式の統一的な安定性解析理論
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17H07302
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
森 直文 福岡工業大学, 工学部, 研究員 (10803413)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 非線形偏微分方程式 / 緩和的双曲系 / Timoshenko 系 / Cattaneo 法則 / 消散構造 / 安定性解析 / 時間大域解 / 減衰評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、流体力学や弾性体力学などに現れる非線形偏微分方程式系が共通して持つ「消散構造」に着目し、その特徴に基づいた最良のエネルギー減衰構造を決定し、関連する非線形波動や振動の安定性問題について有効な解析手法の整備と、統一的な安定性解析の一般論の構築を目指している。特に、これらの多くが属する緩和的双曲型保存則系に対する安定性解析の従来の一般論に乗らない、剪断変形を考慮した梁の振動を表現する Timoshenko 系など、各物理量が複雑に影響を及ぼし合う方程式系のエネルギー評価などに現れる「可微分性の損失」と呼ばれる新しい現象の解明と起因する困難の解決にこれまで貢献してきた。この研究目標に対して、平成29年度は次の成果を得た。
1. 消散的 Timoshenko 系にCattaneo 型の熱力学的消散効果を導入した非線形版のモデルの初期値問題を全空間で考察し、時間大域解の存在と最良の減衰率を持つ減衰評価を、小さい初期値に対してそれぞれ物理的に意味付け可能な最小限のなめらかさのみを仮定して示すことに成功した。 2. 安定性解析の一般論で鍵となる職人技条件を、可微分性の損失を誘発する新しい消散構造をもつ狭義消散的な対称双曲型方程式系すべてに適用できるように一般化し、新しい職人技条件「S & K 混合条件」を開発した。これにより、これまで理解が困難であった可微分性の損失をもつ方程式系の各物理量が複雑に及ぼし合う影響と、エネルギー減衰の仕方や特性との関係を完全に解明することができた.
更に、上記の研究成果を携えて、学会等での研究発表も積極的に行った。平成29年度は、学会一般講演3件、招待講演2件(海外1件、国内1件)を含む研究発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究目標の最重要課題である「新型の可微分性損失型消散構造」に対して、職人技条件「S & K 混合条件」を開発できたことは、安定性解析における新しい一般論の構築に大きく寄与する成果であり、当初の計画以上のものであるから。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進展しており、今後も当初の計画通り研究を進める予定である。
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