2017 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期フランス北部炭鉱におけるポーランド人労働者の実態に関する基礎的研究
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17H07314
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
杉生 博子 (定藤) 鹿児島国際大学, 経済学部, 講師 (40804282)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 経営史 / 移民史 / 産業史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1920~1930年代フランス北部炭鉱におけるポーランド人労働者の実態把握を目的とし、平成29年度は3週間ほど渡仏し、国立労働界文書館所蔵の炭鉱労働者の個票、ならびに炭鉱労働者歴史センター所蔵のエンジニア・レポートの調査を実施した。またこれをもとに、個票のデータベースの作成、学会報告を行った。また、データ解析ソフトSPSSを購入し、統計分析を進めつつある。 これにより、移民史研究の重層化の一助となる研究に着手したと言える。先行研究によって、官公庁の公文書を用いた移民制度の発展は歴史的に明らかにされた。また、日記や聞き取り調査等を用いた移民の生活の実態も明らかにされた。 本研究では、これまで使用されていない企業所有の資料を用いることで、フランス移民史研究に新たな視座を与えることができる。また、本資料は数量データも多く含む。これをデータベース化及び解析することにより、主観的資料から解放され、統計、数量データの駆使によって移民史研究の客観性が高められる。 29年度には、標本調査に十分な数の個票データを収集することができた。また、対象期間中のエンジニア・レポートもすべて入手した。これだけでなく、古書店等で絶版となった研究関連資料を購入、図書館でも同様に重要文献を読むことができた。当研究にとって有益であると考えられる資料が県の文書館にあるという情報を得、そちらでの調査も行うことができた。資料だけでなく、日本における歴史人口学の第一人者である研究者やフランス人の炭鉱研究者・炭鉱労働史研究者と情報交換を行った。これにより、当研究が世界的にも初めての試みであることが評された。このような評価から、当研究の国際的価値を認識するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集:個票とエンジニア・レポートは標本分析及び当該期の炭鉱業の発展をとらえるにあたり必要最低限の資料を入手した。個票は無作為抽出によって選んだ。個票もエンジニア・レポートも、コピーはフランス文書館の規定で禁止されているため、すべて写真撮影によって収集した。撮影数は29年度前半までに収集した資料と合わせると、10,000枚は下らない。 データベース作成:個票のデータベース作成は約2分の1が終わった。個票は労働者の氏名や給与のみならず、出生日、出生地、婚姻地、結婚相手の同様の情報など、多岐にわたる。また、手書きであるため、解読には相当のスキルと時間を要する。また、入力ミスを防ぐため、ダブルチェック体制で行った。エンジニア・レポートのデータベース作成はまだ始まったところと言わざるを得ない。本レポートは第一次大戦後の混乱期には情報が少なかったり、当時の調査対象地域によって、定義の異なる単語や全く異なる用語が使われたりと、数字をそのままデータ入力すれば時系列分析が可能になるという性質の資料ではない。現在まで、そのような歴史資料としての特性を理解しつつ、解読を進め、同時に入力も行っている。 成果:現在まで成果物を出すに至っていないが、収集した資料を基に学会報告を行った。両大戦間期の労働者の個票を使用した初めての研究である点は、やはり高く評価された。また、炭鉱の機械化と労働者の雇用について、炭鉱史研究者から様々な示唆に富んだご指摘をいただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に平成29年度の作業を引き継ぎつつ、炭鉱の機械化と労働者の給与の関連について数量データ分析を試みる。 資料収集: 県立文書館とパリの国立図書館等にて資料調査を実施する。県立文書館では外国人に関する報告書や人口統計の資料を調査する。パリの国立図書館では当時の炭鉱業や労働者の生活についての文献を収集する。特に、炭鉱労働者の給与規定・福利厚生については同時代刊行物を用いて分析する。このため外国人労働者の雇用や給与を明らかにできる統計的資料、報告書を収集したい。資料収集とフランス人研究者との情報・意見交換のため10日間程度の渡仏を1回行う。 データベース作成・分析:個票とエンジニア・レポートのデータベースの作成は、29年度よりアルバイトの雇用を用いて進めたが、30年度も同様に進めたい。分析については29年度に購入した統計ソフト、読み取りソフトを使用して行う。 考察・発表:29年度と同様に、国内外の経済史・経営史・「人の移動」に関する学会に参加・発表する。これにより最先端で国際的な情報収集が可能になる。また、本研究による計量分析の結果とフランスを含むヨーロッパの経済史・経営史・産業史との接合を図るために、一橋大学友部謙一教授、大阪大学ばん澤歩教授、中村征樹准教授からのご助言を請う。そのため、東京、大阪での情報収集及び資料収集、ボストンでの世界経済史学会、アンコーナでのヨーロッパ経営史学会参加、シドニーでの国際メトロポリス会議に参加予定である。 成果:日本語もしくは英語での論文執筆を行う。
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Research Products
(2 results)