2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H07340
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
前川 志織 国際日本文化研究センター, 研究部, 特任助教 (80805664)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | デザイン史 / 広告 / 洋菓子 / 子ども / キャラメル / 視覚文化論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、埼玉県立熊谷図書館での資料調査を重点的に行い、国内外にて口頭発表3件を行った。 1、口頭発表「関東大震災と洋菓子産業をめぐる大衆的ヴィジュアル・イメージ」(2018年2月3日、Mangalabo4国際集会「日本大衆文化は地震をどう描いたか」、エル・コレヒオ・デ・メヒコ アジア・アフリカ研究センター、メキシコ)では、洋菓子産業をめぐる大衆的ヴィジュアル・イメージの一例として、関東大震災直後および帝都復興期における森永製菓の広告および販促活動に注目した。具体的には、森永における震災に伴う救援活動とその広告、バラック建築の一つとしての森永キャンデーストアー、子どもをターゲットとした広告展開の事例をあとづけた。 2、口頭発表「キャラメルのグラフィック広告と子ども文化:森永製菓の童画と漫画による広告表現に注目して」(2018年2月4日、Mangalabo4シンポジウム・セッション「漫画やイストリエタの社会生活」、バスコンセロス図書館、メキシコ)では、1920年代から30年代にかけての森永キャラメルのグラフィック広告に注目し、その広告表現の特徴として、童画的表現と漫画的表現という2種を指摘し、そこには子ども文化の隆盛という時代背景があることを確認した。 3、口頭発表「キャラメルのグラフィック広告と子ども文化:森永製菓の童画による広告表現に注目して」(2018年3月10日、大正イマジュリィ学会、同志社大学)では、いつ、どのように、森永のキャラメル広告は子どもを意識し、童画風の表現を選ぶようになったのかを、主に1910年代から20年代にかけての新聞広告から検討した。先行研究では、製菓会社の児童文化事業の活発化が童心主義にもとづく児童向け雑誌の隆盛と関連すると指摘されているが、このコンテクストを整理することで、それらのグラフィック広告に期待された広告効果についても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、1910年代から20年代までを主たる時期に設定し、特にキャラメル商品に注目しながら、広告における子どもの表象とその広告戦略を検討することにあった。現在までの進捗として、埼玉県立熊谷図書館における資料調査を重点的に行うことができ、国内外にて口頭発表3件を行うことができた。一方で、当初計画にあげた大阪府立中央図書館国際児童文学館などの機関での資料調査を十分に行うことができなかった。これらを鑑みての自己点検による評価区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、1930年代以降に射程を広げ、特にキャラメルとチョコレートの商品特性の違いや広報誌のあり方に注目し、洋菓子広告における人物表象とその広告戦略を検討することを課題としている。したがって今後の方策として、商品特性の違いを考慮しながら、森永の広告活動が児童文化を巧みに利用したことを如実に示す資料を精査し、30年代の広告活動において重要な意味をもつと思われる広報誌各種を比較検討することで、菓子文化がいかに児童文化や少女文化と関わったかを検討していきたい。この方策にもとづき、国内における各機関での資料調査を十分に行い、それにもとづく成果を学会や研究会において引き続き発表していく予定である。
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