2017 Fiscal Year Annual Research Report
即時的火山噴火規模評価のための、空気振動解析による噴煙体積推定手法の新規開発
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17H07345
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
山田 大志 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 火山防災研究部門, 特別研究員 (60804896)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 火山噴煙 / 空振 / インフラサウンド / 空気振動 / 火山灰 / 火山噴火 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、噴火に伴う空振波形の解析によって噴煙体積を高精度に推定することである。既存の波形解析手法で推定される噴煙体積(Vinf)がどのような物理的意味を持つかを把握するため、平成29年度は火山噴煙の数理モデル(Terada and Ida, 2007)から推定される地表付近の噴煙体積(Vb)とVinfの比較を行った。国内外の火山で発生したスケールの異なる53の噴火を対象に調査を行った所、代表値としてVb/Vinf=1.6×101という値を得た。この値は、火山噴煙が火口から出現し(Vinf)、周辺の大気を取り込むことで膨張する(Vb)という物理過程で期待される噴煙の体積変化率で説明することができる。つまり、この経験式を用いることで、地表付近の噴煙体積を空振解析結果から推定することが可能となる。Vbの推定には噴煙の最大到達高度の値を用いており、噴煙体積と同様に噴煙到達高度を予測することも可能である。こうした内容を平成30年2月に開催された研究集会によって発表を行っている。また同内容を論文にまとめ、火山研究を扱う国際誌(Bulletin of Volcanology)に投稿した。 本研究の噴煙体積推定のもう一つのアプローチ手法である映像解析については、平成29年度に野外観測に必要な映像観測機器の選定・購入を行った。現在の火山観測で用いられている機器よりも解像度の高い機器を選定したことにより、詳細な噴煙の振る舞いが記録されることが期待される。映像記録と同時に観測される空振波形の解析結果の比較検討を行うには、映像データに絶対時刻の情報を付与されていることが必要となる。こうした機能を有する入手可能な既成ソフトウェアは存在しないことから、新たなソフトウェアの開発の発注を行った。納品後に所内で試験を行い、映像が絶対時刻の情報付きで保存され、連続的に運用可能なことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、野外観測の準備・開始と観測データの予備解析を当初予定していた。野外観測に必要な観測機器の準備は終了しており、対象とする桜島火山に観測施設を有する京都大学桜島火山観測所との打ち合わせを継続している。観測開始が平成30年度にずれ込むが、桜島火山の活発な噴火活動は継続しており、野外観測によって良質なデータが記録できることが期待される。 予備解析として行った空振解析による噴煙体積と、数理モデルから期待される噴煙体積の比較は、噴煙の成長過程を反映するという新たな結果を得ることができた。この点に関しては当初の想定を上回る進捗である。映像解析によってこの成長過程をより高精度に捉えることができれば、噴煙体積推定の精度向上や経験式が反映する噴煙物理の理論の裏打ちを得ることができると見込まれることから、野外観測における重要な指針を得たと言える。一方で、映像解析で得られる映像の PIV解析の手法に関しての検討や、空振波形を自動的に処理するアルゴリズムに関しては、上述の予備解析の内容を科学雑誌に論文として投稿する作業を優先させたために未着手のままである。これら項目については平成30年度の野外観測の開始と並行して研究を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は桜島火山観測所の施設に映像観測機器を設置し、桜島火山で発生する噴煙の連続映像観測を行う。観測に関しては京都大学の研究者と入念に打ち合わせを行うとともに、噴火現象についての情報交換や、噴煙体積推定についての議論も行う。平成30年5月に開催される地球惑星連合大会、8月にロシアのペトロパブロフスクカムチャツキーで開催されるJKASP、9月にイタリアのナポリで開催されるCities on Volcanoes 10のそれぞれの学会において、平成29年度の研究内容についての研究発表を行う予定である。国内外の研究者と研究内容についての意見交換や議論を深める予定である。イタリアでは、エトナ火山やストロンボリ火山における空振観測研究が盛んに行われている。ロシアは千島列島やカムチャツカ半島の遠隔地に多くの活火山を有しており、近接観測の難しい火山における活動把握のためには空振観測が有効であることから、本研究の成果を検証・運用する上で絶好のフィールドと言える。海外の研究者から空振観測や解析に関する議論を通じ、本研究の成果の発信と噴煙体積推定の精度向上に資する情報収集を図る。 桜島火山で観測された映像記録のPIV解析を行うことによって、噴煙体積の時間発展を明らかにする。特に、前年度の成果である噴煙成長に関する経験式の関係を実際の映像記録の解析を通して検証することは、経験式の有効性を実証と、推定のさらなる精度の向上を図る上でも価値がある。また、空振波形の即時的解析アルゴリズムを開発し、映像記録と比較することで、自動処理による噴煙体積推定を試みる。
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