2017 Fiscal Year Annual Research Report
絶縁基板上におけるボトムアップ型Siナノワイヤ成長技術の創製
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17H07351
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
松村 亮 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 研究員 (90806358)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ナノワイヤ / 金属誘起層交換成長 / 疑似単結晶薄膜 / シリコン / ゲルマニウム / スズ |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギーを有効に活用する要求が世界的に高まっており、高効率な次世代薄膜太陽電池の実現が強く求められている。ナノワイヤ太陽電池技術をSi基板から脱却させ、ガラス基板やプラスチック基板など「基板を選ばない」技術へと昇華することで、高効率、安価、かつ設置場所を選ばない汎用的な次世代薄膜太陽電池が実現する。その実現を目指し、次世代高機能太陽電池実現へ向けた基盤技術として、フレキシブル基板上へ応用可能なボトムアップ型の縦型ナノワイヤ形成手法を研究している。本研究は大きく2つのフェーズにより行われる。 第一フェーズとなる平成29年度は、主に縦型ナノワイヤ成長のテンプレートとなるSi(111)疑似単結晶薄膜を絶縁基板上に形成する技術の構築に充てた。これまで絶縁基板上に多結晶Si(111)薄膜を形成する手法として金属誘起層交換成長法が使われていたが、本手法は成長後の結晶粒の位置制御が不可能であることからランダムな位置に結晶粒界が発生し、縦型ナノワイヤ成長のテンプレート層として使用するには不適であった。採択者はこの金属誘起成長法をシーズとし、成長領域を制御することで、これまで不可能であった成長後の結晶粒の位置制御を行うことに成功した。ボトムアップ型ナノワイヤ成長のテンプレート層として必要なテンプレート技術の創出である。 今後は本研究提案の第二フェーズである縦型ナノワイヤ成長手法の低温化に焦点を当てた研究を推進する。その後、第一フェーズで実現したテンプレート層との融合を行うことで、フレキシブル基板上におけるナノワイヤのボトムアップ成長を実証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多結晶薄膜をナノワイヤ成長のテンプレート層とするためには、成長後の結晶粒の位置制御を行い、結晶粒界と成長するナノワイヤとの位置関係を整合させる必要がある。 採択者はこの問題を解決するため、結晶成長の起点となる核発生の面密度に着目した。金属誘起層交換成長法では、熱処理中にある密度で発生するSi(111)核を起点として横方向に結晶成長が進行する。すなわち、成長初期に発生する核の個数によって、成長後の単位面積あたりの結晶粒の個数が決定する。 そこで採択者は成長領域を制限することで、領域内において単結晶Si(111)薄膜が実現できると着想した。具体的には、絶縁基板上で結晶成長を誘起する前に、フォトリソグラフィ法とリフトオフ法を用いて成長層をアイランド状に加工した。その後熱処理を加え、層交換成長を誘起することで、結晶成長領域がアイランド内のみに限定され、結晶成長の発現する箇所を制御することができると期待した。 この際、アイランドの大きさとその後の熱処理条件をパラメータとして実験を行った。これらの条件を最適化し、また周辺条件も整理することで、理想とする疑似単結晶Si(111)薄膜を絶縁基板上で実現することに成功した。 本成果は今後、ポーランドで開催されるヨーロッパ材料研究学会の秋季大会で報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
目的とするフレキシブル基板上でのナノワイヤ成長のためには、平成29年度に実現したテンプレート層に加え、フレキシブル基板の軟化温度以下でのナノワイヤ成長手法を実現する必要がある。ナノワイヤ成長法として採択者が有するVLS法は、400℃を超える高温プロセスが必要となり、目標達成のためにはVLS法の低温化が求められる。 VLS法低温化のためには、ナノワイヤ成長に用いる触媒金属の溶融温度を低温化することが必要である。採択者は、はんだ等に使われる、金属の共晶反応が金属の溶融温度を低温化する手法として有用であると着目している。 採択者は、VLS法に用いられる触媒金属であるアルミニウムや金に、これらの金属と低温で共晶反応を示す、スズ、鉛、ビスマスなどの金属を添加し、溶融温度の低温化を図る。添加金属種、および濃度をパラメータに、溶融温度及びSi(111)基板上でのVLS法の触媒作用の評価を行い、フィードバックすることを繰り返すことで、極低温でのSiナノワイヤ成長を実現する。 極低温VLS法を確立した後に、平成29年度に実現した疑似単結晶Si(111)薄膜形成技術を重畳することで、ガラス基板上、およびフレキシブルなプラスチック基板上でのSiナノワイヤ成長を立証する。高効率かつ汎用性の高い次世代薄膜太陽電池の実現のみならず、次世代薄膜トランジスタや三次元LSI等の電子デバイス分野にも波及する、非常に夢のある基盤技術の創出である。
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