2017 Fiscal Year Annual Research Report
Single photon generation using carbon nanotube charge-pumping devices
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17H07359
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石井 晃博 国立研究開発法人理化学研究所, 加藤ナノ量子フォトニクス研究室, 特別研究員 (90802687)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ナノチューブ・フラーレン / 量子エレクトロニクス / 光物性 / 励起子物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代の量子情報通信技術の実用化に向けて求められている単一光子発生源では、単一光子の生成効率が高いことと同時に、実用に適した動作温度と発光波長を有し、さらに電気駆動が可能であることが重要である。そこで近年、カーボンナノチューブの持つ特徴的な性質を利用した単一光子源の開発が注目を集めている。本研究ではカーボンナノチューブにおける励起子拡散の特性、特にナノチューブの一次元性に起因する高効率な励起子-励起子消滅を利用して、室温中での通信波長帯における高効率な単一光子生成を実現する。さらに、ミクロンスケールでこれが起こることを利用して、デバイス構造を取り入れることで励起子の電気的な生成を行い、完全電気駆動の単一光子源を実現することを目的とする。 平成29年度は、架橋カーボンナノチューブにおける励起子拡散ダイナミクスを解明するため、超伝導単一光子検出器を導入した時間分解光学測定システムを構築した。これにより単一のカーボンナノチューブからの近赤外領域の発光を非常に高い感度、かつ十分な時間分解能で検出することが可能となった。その後、この測定システムを用いて架橋カーボンナノチューブからの発光の減衰曲線を測定し、架橋長さや励起強度の違いによる発光寿命の変化を観測した。特に架橋長さの影響は顕著であり、長いナノチューブにおいては励起子が比較的長い時間架橋部分に留まり、それによって高い確率で励起子-励起子消滅を起こすことが可能であることが示された。また、ドープされたナノチューブとシリコン微小共振器を組み合わせたデバイスをこの測定システムを用いて測定し、パーセル効果による発光レートの増強と高い品質の単一光子生成が両立できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は時間分解測定システムの構築を開始し、予定通りに完了することができた。また、架橋カーボンナノチューブを用いて動作テストを行い、想定していた水準の性能を持つことが確認できた。実際にこの測定システムを用いて、ドープされたナノチューブとシリコン微小共振器を組み合わせたサンプルの特性評価を行い、発光寿命の測定、及び光子相関測定に成功した。架橋カーボンナノチューブの励起子ダイナミクスに関する測定も進行中であり、さらにデータが集まれば解析に移れる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成29年度中に構築した時間分解光学測定システムを用いて、カーボンナノチューブにおける励起子ダイナミクスを明らかにする。特に、合成直後のサンプルを用いることでナノチューブ表面に分子が吸着していない状態を作りだせることから、吸着分子の有無が励起子拡散に及ぼす影響について解明する。これにより、外的な要因による単一光子生成効率の向上の実現可能性を探る。 その後、SOI基板上に作製したデバイスの上にカーボンナノチューブを合成し、光励起された電荷をゲート電圧の変調によって保持することによる光メモリデバイスを作製する。このデバイスの応答特性を時間分解測定によって調べることにより、ナノチューブ中における電荷の蓄積・拡散ダイナミクスを明らかにする。また、このデバイスの動作にゲート電圧印加による電荷蓄積を導入することで電気的な方法による電荷の蓄積・拡散を実現し、それによって生じた励起子が励起子-励起子消滅による単一光子生成を起こすことによって、電荷汲み上げ発光素子による単一光子発生を達成する。
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